PCRをよくわかってない人に知ってほしい基本

新型コロナの検査になぜ使われているのか

中学理科のレベルでやさしく解説します(写真:RyanKing999/iStock)
感染症の元になるウイルスから、健康・暮らしに役立つものまで。世界は微生物が動かしている。中学理科のレベルで、やさしく解説した『世界を変えた微生物と感染症』より、PCRのパートを一部抜粋・再編集して掲載する。

PCRはウイルス感染やDNA型鑑定などに使う

新型コロナウイルス感染症に関わる一連の報道の中で、その検査方法として「PCR」という言葉がしきりに出てきました。PCRは、今回のようなウイルス感染の検査や、DNA型鑑定(遺伝子鑑定)などに使われる技術です。

PCRとはポリメラーゼチェーンリアクションの頭文字で、ポリメラーゼはDNA合成酵素、チェーンリアクションは連鎖反応(連続した反応)を意味します。1983年に発明され、その後しばらく経ってから完成した比較的新しい方法ですが、今や医療の現場、生物学の研究には欠かせない技術になりました。この技術を使えば、遺伝子となる核酸(DNA・RNA)を無限に増やすことができ、ほんのわずかなサンプルでもそこから遺伝情報を読み取れるようになります。

そんなすごい方法ですが、仕組み自体はとてもシンプルです。増やしたいDNAが含まれたサンプルと、DNAの材料となる物質、そしてDNA合成酵素を加えた混合液を100℃近くまで温め、60℃くらいまで冷まし、また70℃くらいまで温める。

たったこれだけです。ほんの数分で済んでしまう作業で、1本のDNAが2本になります。これを何度もくり返せば、2本が4本に、4本が8本に……という具合に倍、倍になっていきます。自動で温度を上下させる機械を使えばもっと簡単に、ものの1時間でDNAが10億倍にもなります。

しかし、この方法には根本的な問題がありました。DNA合成酵素はタンパク質でできているので、100℃近くまで温めると壊れてしまうのです。ゆでたまごが生たまごには2度と戻らないように、一度熱で壊れたタンパク質は元には戻りません。ですから、1回の作業を終えるごとに、DNA合成酵素を追加しなければなりませんでした。つまり、「連鎖(連続)する反応」になっていなかったということです。

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