香港政府はなぜ市民との対話を拒んでいるのか 入境拒否された日本の市議会議員が語る危機感
2020年6月30日夜、香港で施行された「国家安全維持法」がその力を見せ始めた。香港警察は8月10日、香港内民主派に近いメディアの創業者である黎智英(ジミー・ライ)氏を同法違反で拘束。また11日には、日本でも活動家として有名な周庭(アグネス・チョウ)氏も逮捕された。両氏ともに12日までに釈放された。1997年に英国から中国に返還された香港は、「一国二制度」の下で独自の自由と民主社会を形成してきたが、この数年、急速に中国的で権威主義的な社会に変わりつつある。
千葉県白井市の市議会議員である和田健一郎氏は2年前に香港を訪れた際、空港で入境拒否された。明確な理由は告げられないまま、強制的に帰国させられた。「民主派議員や活動家との関係が近い」との香港メディアの報道が事前にあり、それが影響したとされているが、今でも理由はわからないままだ。台湾への留学経験もあり、中華圏の事情に詳しい和田氏が、自身が受けた非民主的な経験も含めて、香港の民主化運動をどう見ているのか、語ってもらった。
捏造報道の後にブラックリスト入り?
――和田さんが香港当局に入境拒否されたのは2018年8月。2014年の民主化運動「雨傘運動」が過ぎ去り、政治的には静かな時期でした。これまで自由を標榜してきた香港が、外国人の入境を拒否することはまれでした。和田さんを入境拒否した経緯はどのようなものでしたか。
市議会議員の公務ではなく、白井市名産の梨を香港に向けて輸出再開する動きがあるというので、それを現地で応援する予定でした。
香港国際空港に到着してボーディンブリッジを出ようとした途端、係員に入境を止められました。入境拒否の理由は説明されず、「入境拒否通知書」へのサインを求められました。サインはしませんでしたが、係員十数人によって日本行きの飛行機に乗せられ、帰国を余儀なくされました。
――もともと香港で現地の政治活動を応援したり、民主活動家を支援したりといった活動はされていたのですか。
まったくありませんでした。2016年に香港の民主党の区議と知り合いになり、8月11日に逮捕された周庭さんを「日本語を熱心に勉強している若者がいるから」と紹介されていたので、彼らとの親交はありましたが。
――入境拒否の理由として思い当たることはありますか。
2018年3月11日に香港の立法会補欠選挙があったのですが、その前日10日付の香港紙「文匯報」が「(和田が)選挙に干渉したことで、中国外交部は日本へ強烈な不満を述べた」と一面で報道しました。文匯報はもともと親中国系のメディアです。これはまったくの捏造記事で、私は香港の選挙に関わったことはない。文匯報の記者からの取材を受けたこともありません。一方的な報道でした。おそらく、この報道が入境拒否の導火線になったのではないかと推察しています。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら