「無名企業」のワクチン候補が超注目される理由

スピード生産で21年初めまでに1億本が可能に

アメリカ・メリーランド州の無名企業がアメリカ政府から16億ドルの資金提供け開発している新型コロナウイルス用ワクチンに期待が集まっている理由とは(写真:Dado Ruvic/ロイター)

新型コロナウイルスの試験的ワクチン開発でアメリカ連邦政府から16億ドル(約1700億円)の資金提供を受けていたメリーランド州の無名企業「ノババックス」は4日、2件の予備的試験で有望な結果が得られたと発表した。

うち1件の試験では、56人の参加者がウイルスを防ぐ抗体を高レベルで生成し、しかも有害な副作用は起こらなかった。もう1件の試験では、サルに投与したワクチンが強い感染防止作用を示した。

互いに異なるコロナウイルス用ワクチンの試験データを単純に比較することはできないが、ワイル・コーネル医科学大学院のウイルス学者、ジョン・ムーア氏(今回の試験には関与していない)は、ノババックスの試験結果はこれまでで最も素晴らしいものだったという。

「『自分も投与したい』と思ったワクチンはこれが初めてだ」とムーア氏は語った。

ほかのワクチンと異なる仕組み

ただ、コロンビア大学のウイルス学者、アンジェラ・ラスムッセン氏(同じく試験には関与していない)は、一連の試験について「予備的結果としては心強いものだ」としながらも、ノババックスが第3相試験と呼ばれる大規模試験に移り、ワクチンを摂取した人とプラセボを摂取した人の状態を比較するまでは、ワクチンの安全性と効果について確定的なことは言えないと注意を促す。

ノババックスの研究開発責任者、グレゴリー・グレン氏によれば、試験結果は科学雑誌に提出され、掲載に向けて査読が行われているところだという。

同社は、ワクチンの有効性が示された場合、来年初めまでにワクチンを1億本分(2回に分けて投与するなら5000万人分)製造できるとしている。連邦政府との契約では、ワクチンの効果が証明された場合、数百万本規模の大量生産を行うための資金も提供される予定となっている。

人間を対象にした安全性試験の第1段階(第1相試験と呼ばれる)に入ったコロナウイルスのワクチンは24種類以上あり、ノババックスのワクチンはその1つだ。ほかにも5種類のワクチンがすでに第3相試験に入っており、何千人といった規模で有効性のテストが進められている。

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