「無名企業」のワクチン候補が超注目される理由 スピード生産で21年初めまでに1億本が可能に
メリーランド大学医学部のウイルス学者で、第1相試験の論文の共同執筆者でもあるマット・フリーマン氏は次のように語る。「どれくらいの抗体ができれば感染を防げるかはまだわかっていない。しかし、今回の試験結果はどれもワクチンがかなり効果的であることを示している」。
スパイクタンパク質だけを含むワクチンを接種したボランティアは抗体を多く作らなかったことがわかっている。ノババックスのグレン氏は「アジュバントが極めて重要だ」と語った。
世界保健機関(WHO)は、非臨床試験段階にあるタンパク質ベースのコロナワクチンを50種類以上リストアップしている。そのうちの1つはサノフィとグラクソ・スミスクラインが共同開発しているものだが、両社は7月、連邦政府から1億本分のワクチン開発のために21億ドルの資金提供を受けている。サノフィは9月に第1相試験を開始する予定だ。
サノフィとノババックスはどちらもガの「ツマジロクサヨトウ」の細胞内部でワクチンを製造している。哺乳類の細胞を使う従来の方法より迅速にワクチンを製造できる。ノババックスのワクチン候補がこれほど注目されている理由の1つは、この技術にある。
同社はアメリカ政府との契約に加えて、アメリカ外へのワクチン普及をめざす非営利団体の感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)からも最大3億8800万ドルの資金提供を受けている。すでに市場に出回っているサノフィのインフルエンザワクチン「フルブロック」にも、これと同じ技術が使われている。
最高のコロナワクチンは?
抗体の重要性は免疫学者によって議論が進められているところだが、コロナウイルスと戦うには免疫システムの別の構成要素であるT細胞も必要になる可能性がある。ムーア氏は、両方の反応を促すワクチンこそがコロナウイルスに対する最良のワクチンになるとみる。
タンパク質ワクチンで強力な防御抗体を作り出す一方、T細胞は別のワクチン(メッセンジャーRNAやアデノウイルスがベースになると考えられる)で誘導できるかもしれない。
「第1世代のコロナワクチンが安全でも十分な効果を発揮しなかった場合には当然、複数のワクチンを組み合わせる方法を探ることになる」とムーア氏は話す。
(執筆:Carl Zimmer記者、Katie Thomas記者)
(C)2020 The New York Times News Services
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