新型コロナ、「2週間後」予測はなぜハズレるのか 高橋泰教授「データに合う新型コロナ観を持て」

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――最近は「東京や名古屋など一部地域で、陽性率の高い地域がある。だから危ない」という主張がよく聞かれます。

PCR検査はその時々で陽性者のいそうなところを探して検査している。無作為抽出ではないので、統計的に陽性率を云々することには意味がない。PCR検査の結果にこだわるのは間違いであることは前回のインタビューで感染の広がり方として説明した。これもコロナ観の違いから来ている。

――コロナ観が違うので、検査にこだわってしまう。

あまり多くの人がかからないが、かかると大変、となれば、検査にお金をかけて、かかっている人を見つけ出して閉じ込めようという発想になりがちだ。でも、風邪のように蔓延するけど、98%が自然免疫で治り、酷い症状になるのはごく一部の人だけ、ということになれば、重篤化リスクの高い基礎疾患のある人や高齢者のいる病院や施設を重点的に守ったほうが効果も大きいという考え方になる。

事実を認め、間違いを修正するべき

――新型コロナについては研究が進行形ですし、治療薬やワクチンもまだ試行錯誤が続いています。しかし、歴史的には19世紀前半のジョン・スノウの例がありますね。

ジョン・スノウ。コレラ菌が発見される前に対策に成功し、「疫学の父」とも呼ばれる(写真:ウィキペディア)

疫学では有名な話だ。1840年代にロンドンのソーホー地区でコレラが蔓延した。ロベルト・コッホがコレラ菌を発見したのは1880年代であり、当時は正体がわからなかった。

でも、スノウは患者の発生をマッピングし、中心にブロード・ストリートの公共井戸のポンプがあることを突き止めた。その利用をやめさせたら、コレラが終息した。病原体の正体がわからなくても、ファクトから適切な対策をとることは可能だということを示す良い例だ。

今回の新型コロナも、まだ正体がわからない点が多いが、これまでの重症者数・死亡者数の少なさやGoToキャンペーン後もそれが増えないことから類推すると、新型コロナは少なくとも日本人にとって恐怖のウイルスではない、という結論にたどりつく。

これは対策として、国民の不安を増長する過度のPCR検査と隔離政策はやめるべきだという結論にもなる。これまでの経緯から考えて、積極的なPCR検査を中止しても、重症者や死亡者は急増せず、インフルエンザによる死亡者数を超える可能性は低い。マスコミがPCR陽性者数の報道を中止しても、国民の生命は脅かされることもなく、むしろ落ち着いて、かつての生活を取り戻せるのではないか。

ときに誤解も拡散されるオンラインニュースの時代。解説部コラムニスト7人がそれぞれの専門性を武器に事実やデータを掘り下げてわかりやすく解説する、東洋経済のブリーフィングサイト。画像をクリックするとサイトにジャンプします

――演繹法で考えるか、帰納法で考えるか、という感じですね。

私も含め、机上の理論で対策を考えたら事実に合わず、間違っていた、ということはよくある。そのときは、間違いを認め修正すべきだ。

現在の新型コロナの過度の抑制政策は、教育・経済など人々の日常の営みにブレーキをかけることによって、国民に大きな代償を強いている。重症者や死者の少なさなどの事実を無視し、コロナは恐怖のウイルスであるというイメージにとらわれている政策や報道を、今一度考え直すべきステージに来ていると思う。

大崎 明子 東洋経済 編集委員

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おおさき あきこ / Akiko Osaki

早稲田大学政治経済学部卒。1985年東洋経済新報社入社。機械、精密機器業界などを担当後、関西支社でバブルのピークと崩壊に遇い不動産市場を取材。その後、『週刊東洋経済』編集部、『オール投資』編集部、証券・保険・銀行業界の担当を経て『金融ビジネス』編集長。一橋大学大学院国際企業戦略研究科(経営法務)修士。現在は、金融市場全般と地方銀行をウォッチする一方、マクロ経済を担当。

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