日本人を貧しくする商習慣「中抜き」がヤバい訳

中間マージン取るだけのムダな会社が多すぎる

元請け、下請け、孫請け、それぞれの企業に管理部門が存在しており、その分だけ人件費が余計にかかる。各企業は利益を上げる必要があることから、再委託されるたびに業務の付加価値は減っていく。

例えば、システム開発を(1人のシステムエンジニアが1カ月で行う作業量の対価として)150万円で顧客が発注しても、元請け企業が40万円を中抜きすれば下請け企業には110万円しか渡らない。さらに下請け企業が30万円を中抜きすると孫請け企業は80万円で仕事を受けることになるため、最終的には単価が半分近くになってしまう。

流通でも似たような現象が起きている。日本の流通コストは諸外国よりも高いとされるが、その理由は販売会社の数が多過ぎ、多くのムダが発生しているからである。中抜きを排除するなど産業構造をシンプルにするだけで賃金は大幅に上昇し、余剰となった労働力が他の生産に従事すれば、GDPの絶対値も増える。

「付加価値の低い中小企業」が多すぎる

こうした産業の合理化は失業を増やしたり、中小企業の経営を圧迫するとの見方があるがそうではない。確かにアメリカは日本よりも人口当たりの企業数が少ないが、アメリカと同レベルの生産性を誇るドイツは日本並みの企業数で、中小企業の比率も高い。だがドイツの中小企業の利益率は大企業と同等か、むしろ高くなっており、中小企業=低付加価値にはなっていない。

日本の問題は付加価値の低い中小企業が多いことであり、その原因の1つがこうした産業構造にあると考えられる。政府の事業はもちろんのこと、民間でも再委託の慣習は可能な限り排除していく必要があるだろう。

<本誌2020年8月4日号掲載>

加谷珪一(かや けいいち)/経済評論家
東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村証券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。http://k-kaya.com/
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