ゴルフツアー「有観客再始動」の良い点・悪い点 トーナメントの「新様式」のヒントを探る

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ゴルフのトーナメントでは、PGA、JGTO、JLPGAはあくまで「主管」する団体であり、トーナメント主催者の大会に選手を派遣し、大会を管理・運営するという立場だ。大会を開く・開かないの判断はあくまで主催者にある。これがプロ野球やJリーグ、大相撲との違いでもある。

ISPSの半田会長は、大会開催にあたっての会見で「万全の対策を講じても、万が一があるかもしれない。そのときは責任を持ちたい。お詫びもするし、感染者には休業中の見舞金も出します。リスクをわかったうえで、対策を徹底的にやっていく」と話している。

「ミッツポリス」がソーシャルディスタンスの確保を徹底(写真:筆者撮影)

アース・モンダミンカップや今回のISPSのように、主催者側に「感染対策をしたうえでトーナメントを開催する」という強い意志がないと、現状のように試合がどんどんなくなる。

「責任をとる」と言っても取り方をどうするかは、起こってみないとわからないところでもある。それでも主催者にそういう覚悟があり、同じ覚悟をした主管者が「クリーンな状態の選手を派遣し、クリーンな人たちで大会を運営する」ために、感染防止を日ごろから徹底していく。その両者の行動・考え方が一致しないと、現状では開催できないということだろう。

無症状者がいたり、感染がわかっていて出歩く人がいる以上、感染するのは、どんなに対策をしても「もらい事故」のようになりつつある。感染者を片っ端から非難するのは間違いであり、非難されるとすれば、感染の仕方・感染後の対応によるはずだ。

世界がウィズコロナの中で経済を回しながら、感染防止をするという、ある意味相反する目的を持って活動する覚悟をした以上、ゴルフ界もどこかでそういう覚悟をしないと、来季も同じ状況が続くかもしれない。

倉本会長は「われわれがギャラリーを入れることによって、ほかのツアーが知恵を絞って、やればできるということをわかっていただけたら」と話す。さらに、大会終了後には次のように総括した。

「選手は試合が始まってよかったというのが偽らざる心境でしょう。でも、ただ『よかった』で済まさないで、もっともっと安全にプレーする環境をつくりたい。ギャラリーも安全に楽しく観戦できるようにしたい。今回やってみて、改善点も見えてきた。次の大会までに改善していきたい」

ギャラリーの居場所確保に再考の余地

最後に、実際に取材をしていて、例えばこうすればよいのではないか、と気づいた点を提案しておきたい。

コースを回っていていちばん気になったのは、ギャラリーが食事や休憩をするギャラリープラザだ。飲食物の購入時や、食事をする際、どうしても密になりがちだった。食べたり飲んだりするときは、当然フェイスシールドやマスクは外す。広いスペースが必要になってくるだろう。

ソーシャルディスタンスを守れるように、簡易チェアをグリーンやティーイングエリアの周りに置いておく。密にならないように、ローピングに目印をつけて、立つ位置を指定する。それを2重3重にすると、多くのギャラリーの居場所ができる。

手探りでも、できることをやり、足りないことは補って、感染リスクを下げていく。大会コースの選定や会場づくりの導線なども、感染防止を意識しないといけなくなるだろう。

一方で、ドーム球場や国技館などと違い、ゴルフ場は「3密」になりにくい利点がある。シニアツアーは8月に2試合を予定している。ウィズコロナの中で、いかに知恵を絞ることができるか。その先に「トーナメントの新様式」が見つかるはずだ。

赤坂 厚 スポーツライター

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あかさか あつし / Atsushi Akasaka

1982年日刊スポーツ新聞社に入社し、同年からゴルフを担当。AON全盛期、岡本綾子のアメリカ女子ツアーなどを取材。カルガリー冬季五輪、プロ野球巨人、バルセロナ五輪、大相撲などを担当後、社会部でオウム事件などを取材。文化社会部、スポーツ部、東北支社でデスク、2012年に同新聞社を退社。著書に『ゴルフが消える日 至高のスポーツは「贅沢」「接待」から脱却できるか』(中央公論新社)。

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