ゴルフカートが「自動運転化」で注目される理由 あえてローテクで勝負する「ヤマハ」の公算
地方自治体の人手不足や過疎化の解決策として、さまざまなアイデアや新しいモビリティが提案されている。しかし、どれも実証実験で足踏みとなり、社会実装までたどり着くものは少ない。
そうした中、すでにいくつかの商用利用をスタートさせた存在がある。それがヤマハの「ランドカー」だ。このランドカーは、新世代のモビリティとしてだけでなく、自動運転の面でも実績を積んでいる。
ヤマハのランドカーをかんたんに言えば、ゴルフ場を走るゴルフカート(電動カート)を公道走行可能にした乗り物だ。
最先端技術の結集ではなく、昔からゴルフ場を走りまわる車両が基本となる。実はヤマハは、ゴルフ場向けのゴルフカートの国内トップメーカーで、毎年6000台ほどを国内向けに販売。海外向けも合わせると、年間6.6万台を生産しているのだ。
全国での実証実験、40回以上
そのゴルフ場向けの電動車両を公道で走らせることになったのは、「2014年の石川県輪島市からの要望がきっかけでした」と、ヤマハ発動機株式会社 先進技術本部 研究開発統括部 LSM開発部 事業企画グループ 田口慎一郎氏は説明する。
目的は、高齢者の移動手段の確保と観光向けの足。そこでヤマハは、ゴルフカートに軽自動車のナンバーを取得し、公道を走れるようにしたランドカーを世に送り出した。ヤマハのランドカーは電動で環境に優しく、低床で乗り降りもしやすい、そしてなによりも低コストである点で、輪島市の要望に応えることができた。
この2014年の試みは大いに注目を集め、以後ヤマハには毎年のように実証実験の話が持ち込まれることになる。さらに2019年からは、観光用タクシーとして広島県での運用もスタート。ヤマハのランドカーは、ドライバーが運転する、低速の公共交通として大きな実績を積み重ねてきたのだ。
一方、自動運転に関しても、ヤマハのランドカーは人気者だ。
2017年には、ゴルフカートを使った日本初の遠隔式実証実験を沖縄で実施。こちらは経済産業省と国土交通省が進める自動走行に関するプロジェクトだ。それ以降も実証実験が全国各地で行われており、実施回数は、有人走行をも含めると全国10か所以上、累計では40回以上となっている。
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