ゴルフカートが「自動運転化」で注目される理由 あえてローテクで勝負する「ヤマハ」の公算
コロナ騒動で、棚上げになりつつあるが、2020年夏以降の社会実装を予定する地域もある。ちなみに、石川県輪島地区ではコロナ禍で4月中旬より運航中止になっているものの、一部区間を自動走行で運行していた。
また、自動運転のための研究用のランドカー「アカデミックパックPRO」も発売しており、自動車技術会主催の自動運転AIチャレンジの競技用ベース車に採用もされている。自動運転の研究方面でもヤマハのランドカーは、一定の存在感を得ているのだ。
ヤマハのランドカーが新しい公共交通として、また自動運転車両として人気を集めるには理由がある。最大の魅力は、コストの安さだ。
ゴルフ場を走るゴルフカートを流用しているのだから、車両を一から開発する必要がない。また、最高速度を時速20kmと決めることで、技術的な問題の多くがクリアになる。町を走る乗用車のような、横滑り防止装置(ESP)などの高度な車両制御技術も不要だから、コストを抑えることができる。
さらに速度が遅いことは、景色を楽しむ余裕を生む。観光用途には、速度が遅いことも利点となるのだ。ちなみにヤマハのランドカーには、車体にドアがなく、エアコンやヒーターもない。
「たしかに雨に濡れる、冬は寒いというデメリットはあります。でも、それを乗り越えて使いたいという声がかかるんですね。おもしろいことに、ランドカーは知らない人同士で乗ってもキャッキャと会話が弾むんです。四季を感じられるのが特徴なんですね」と田口氏。
実際に小雪のちらつく厳冬の秋田での実証実験では、ビニール製のカバーで車体を包むだけの状態で運用されていた。
自動運転ゴルフカートは20年前からあった
自動運転システムのシンプルさも、ヤマハのランドカーの大きな特徴だ。
「ヤマハのランドカーは、A地点からB地点まで人を運ぶことを考えたときに、安価で確実。シンプルなんです。20年以上にわたって、ゴルフ場で使われてきている実績があります」とは、車両開発を担当してきたヤマハモーターパワープロダクツ株式会社 開発統括部 商品開発部 認証技術課 吉井芳徳氏だ。
ゴルフをする人間であれば周知であろうが、ゴルフ場には自動運転のカートがすでに普及している。自動運転の仕組みはシンプルそのもの。走るコースの地面に、誘導のための線が埋め込まれており、その上をゴルフカートがなぞって走る。
ヤマハは1996年からゴルフ場向けに、同システムの販売を開始しているが、同様のシステムは、自動車などの生産工場で部品運搬などにも広く使われているものでもある。
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