ぺんてる、埋まらない筆頭株主コクヨとの距離 買収騒動から半年余り。膠着状態が続いている

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ぺんてるの小野社長は「いつまでもケンカをしていていいとは思っていない」と述べた(撮影:今井康一)
2019年11月、総合文具トップのコクヨが筆記具4位のぺんてるに買収を仕掛け、ぺんてる側は「一方的かつ強圧的な方針に、強く抗議する」と猛反発した。
結局、ホワイトナイトに入った総合文具2位のプラスがぺんてるの株式を約30%を取得し、コクヨによる子会社化は阻まれた。従来、株式の38%を保有していたコクヨの議決権取得率は45%にとどまる。
その結果、「水と油」とされるライバル2社(コクヨとプラス)がぺんてるの大株主として“同居”することになった。こうした中、2020年6月にぺんてるの新社長に就任したのが小野裕之氏だ。現状をどう受け止めているのか。小野氏を直撃した。

株主からの「ぺんてる愛」を感じた

――2019年末、コクヨが仕掛けた買収工作はホワイトナイトに入ったプラスによって阻止され、コクヨによる子会社化を回避しました。

買い取り価格はプラスとコクヨで差があった(編注:プラスは1株3500円。コクヨは3500円から3750円、4200円へと2度値上げ)。にもかかわらず多くの株主がプラスに売ってくれた。ぺんてるの株主は以前ぺんてるで働いていた方々が多い。ぺんてるの社風をよく知り、大事にしてほしいと願っている。この結果からは、ぺんてるの独立性や社風を今後も維持してほしいという強い意志、「ぺんてる愛」を感じた。

――コクヨが昨年の買い付けで上積みした8%分のぺんてる株式は、今どういう状況ですか。

ぺんてる取締役会は(コクヨの追加取得を)承認していないので、資本上は宙に浮いている。この状態が当面は続くのだろう。

――元はといえば、コクヨ経営陣がぺんてるを買収して子会社化する方針を示したのは、筆頭株主である自分たちの知らぬところでプラスと資本提携の協議を進めていたことが発覚したからでした。

それ以前の問題として、われわれには(2019年5月の)コクヨの37%取得の方法に不信感があった。

――従来のぺんてる筆頭株主であった投資ファンド・マーキュリアインベストメントの有限責任持ち分を、コクヨが丸ごと買い取る(間接保有)というイレギュラーな方法でした。

和田優社長(当時)が「青天の霹靂」と表現したとおり。あれがコクヨに対する不信感の原点だ。

――ではなぜ取締役会は2019年9月、コクヨによる株の直接保有(約37%)を取締役会で承認したのですか?

不信感があったとはいえ、コクヨには我が社の筆頭株主になっていただいている。

ぺんてるの企業価値を向上させていかなければならないときに、睨み合いを続けていても仕方がないという判断だった。株を直接保有していただくことで、前向きに話ができる環境が生まれるかもしれなかった。

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