4割が廃業危機「伝統工芸職人」の新しい突破口 高齢化が進みIT導入もなかなかできていない

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危機打開に向け、スタートアップ企業がオンライン化の支援に乗り出した。「つるっとした麺類も食べやすい 漆箸」「おかずをおしゃれに魅せる 瀬戸焼の長い器」――。和えるが4月29日に始めたサイト「aeru gallery(あえるギャラリー)」には日々の暮らしで使える伝統品が90点近く並ぶ。販売価格は2000円~5000円程度が中心だ。

初めてネットで販売する職人もスムーズに出品できるよう、写真の撮影、商品名・説明文の作成は和えるのスタッフが行う。伝統工芸になじみがない若年層でも商品名を見るだけで日常生活での利用シーンを想定しやすい。

「コロナで自宅で食事を取る機会が増えたことで、食器や箸はいいものを使いたいという人が増えている」。和えるの矢島里佳代表はこう指摘する。自宅でのオンラインのミーティングに備えて、和紙のインテリア商品を購入するなど、新たな生活様式に伝統工芸品を取り入れる需要が出ているという。

職人が実演するオンラインイベントも

ただ、写真や文章だけでは、作っている過程や職人の思いまでは伝わりにくい。そこで和えるは一般のユーザーが 「aeru gallery」に出品している職人の工房をオンラインで訪問できる取り組みも始めた。

オンラインイベントでの和ろうそくの実演(写真:筆者提供)

「和ろうそくの火は油で消せるんです」。ウェブ会議システムZoom(ズーム)を通じて職人の田川さんが実演してみせると、映像を見ていた参加者からは「これすごい!」「勉強になることばかりで感動しています!」などとコメントが寄せられた。これは7月18日夜に開かれた中村ローソクの工房訪問イベントの1コマだ。

イベントには全国から約50人が参加。和ろうそくにまつわる歴史を学んだ後、ろうを鍋で溶かし、型に流して、職人が手作業でろうそくの形に仕上げる様子を閲覧した。Zoomを通じて疑問点を直接職人に質問することも可能だ。

東京都に住む大学生の山田璃々子さん(19)は「aeru gallery」を通じて「和ろうそくはじめてセット(小)」(税込1980円)を事前に購入し、イベント当日は職人の指導の下、自身のろうそくに火を灯した。「伝統工芸品は使うまでのハードルが高いが、職人さんに使い方まで教えてもらえるのがよい」と満足そうに話す。

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