農業よ農民よ!経営者たれ 直売所革命vs「6次産業」化--木内博一・農事組合法人和郷園代表理事/長谷川久夫・農業法人みずほ代表取締役社長

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畑の歩留まりを上げ中国工場にも勝つ

和郷園の木内も、ハナから「経営者」だったわけではない。農水省の農業者大学校を卒業した89年は、バブルの真っただ中。その気なら、就職口は引く手あまただった。が、長男に生まれたからには、ひとまず、農業を朝から晩までやってみよう。

大卒初任給が25万円のとき、親のくれた“給料”は3万円。我慢ならなかったのは、計画性のなさだ。朝にならないと、その日の作業がわからない。「おやじ、頼むから、1週間の作業計画を立ててくれや」。

できない。天候や作物の出来不出来。市場や最終需要者の動向に決定的に振り回されるからだ。こんなんじゃ、農業は産業にならない。

木内が仲間4人と始めたのは、今で言う「ブランディング」だった。

「減農薬でひと味違う和郷園のホウレンソウ。注文をいただいて作ります」。飛び込みでスーパーの注文を募り、仲卸商にも手数料を払って契約先を斡旋してもらう。皮肉なことに、農作物の価格を押し下げているオーバーストア状況が幸いした。スーパーや生協は差別化のため「よそにない」商材を求めていたのだ。

次に取り組んだのが、「無駄」の排除だ。「畑で採ったモノを畑で捨てている」と言われるように、農業の歩留まりは極めて悪い。木内は余剰の農作物を有効活用するために03年に冷凍工場、04年には非規格品を調理用・外食産業向け製品にパックするカット工場を立ち上げた。

とりわけ、冷凍工場は画期的だった。旬のときに収穫量を一気に出荷すれば、価格を押し下げる。一部を冷凍に回せば、旬の味とともに安定価格を確保できる。価格決定権をしっかりつかみ取る手段なのである。

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