最低賃金「韓国の大失敗」俗説を信じる人の短絡 国の大問題を語る人に「落ち着け」の一言を贈る

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日本のマスコミの多くは、最低賃金引き上げ後の騒動は取り上げましたが、すぐに落ち着いた事実はほとんど報道しませんでした。

これでは、冒頭でご紹介したように「最低賃金の引き上げで韓国経済はボロボロになった」という認識を持っている人がいても、ある意味仕方がないとは思います。ですが、その認識を根拠に何か意見をする場合には、一度落ち着いて、失業率のデータを探すくらいの慎重さがあってもいいのではないでしょうか。

客観的に見れば、2018年と2019年の最低賃金の引き上げは、韓国の失業率には大きな影響を与えているとは言えないのです。

この記事では、倒産の統計はあえて紹介しません。それは、倒産が増えても、失業率が上がらなかったら、その統計は重要ではないと考えているからです。

日本では、倒産イコール失業率の上昇と捉えている人が多いですが、それは誤解です。統計上、日本の経営者が強調するほど、倒産と失業率の間には相関関係も因果関係もないのです。

私は、韓国の産業構造は日本以上に弱いと考えています。しかしデータを分析すると、最低賃金で働いている人の賃金は、この2年間の引き上げで表面的に30%も増えたことがわかります。しかもこの間、失業者は増えていないのです。

2019年、韓国は労働生産性で日本を抜いた

では、労働生産性はどうなったでしょうか。世界銀行によると、韓国の購買力調整済み労働生産性は1991年の51位から、2019年には31位まで上がりました。この年の日本の順位は34位で、初めて韓国に抜かされました。GDPを人口で割った生産性でも、IMFの2020年予想では、韓国は日本の99.2%まで上がり、2021年か2022年には日本を抜いていく勢いです。

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