中国巨大電池メーカーが今「世界進出」を急ぐ訳 現地LIB市場トップのCATLが目指すものとは

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また、自動車メーカーが補助金の減額に伴うコスト上昇分を電池メーカーに転嫁するため、電池価格が下落するだけではなく、電池メーカーの売掛金回収期間も引き延ばされる傾向にある。実際、CATLの電池販売価格は2017年の210ドル/㎏Whから、2020年の約110ドル/㎏Whへと低下し、粗利益は2020年1Qに25%と、ピーク時の2016年(44%)から大きく落ち込んだ。

トップ4社でLIB市場の約8割を占める

中国政府は2017年から電池分野における外資系メーカーの独資での事業展開を容認し、2019年にはLIB産業を外資投資の奨励産業分類に格上げした。これを受け、外資系メーカーは、中国市場で生産体制の整備を急いでおり、長年地場ブランドの寡占状態だったLIB市場に変化をもたらしている。

2020年1~6月の中国LIB市場を見ると、CATLは48.3%、BYDは 14.0%のシェアで、上位2位を占める。販売好調のテスラモデル3にLIBを供給したLG化学とパナソニックは大きく躍進し、初めてトップ4にランクインした。トップ4社の合算シェアは78.5%となり、業界の寡占化が進んでいる。

LG化学は2023年までに中国における電池事業に計37.8億ドルを投資すると発表。EV年産50万台分に対応する南京の電池新工場が、従来からのラミネート型電池の生産に限らず、円筒型電池も生産し、テスラモデル3の現地生産に合わせて2019年末に稼働した。

パナソニックは、地場メーカーの大連遼無二電器と合弁で2015年に電池工場を立ち上げ、プラグインハイブリッド(PHV)向けの電池を生産している。2020年にはEV電池を量産し、第3工場の建設も視野に入れる。パナソニックの大連工場は2020年4月からトヨタとパナソニックが共同で設立する新会社に移管し、幅広く自動車メーカーに製品を供給する方針だ。

また、SKイノベーションは、2018年に江蘇省常州市にEV25万台分に相当する電池工場を建設し、2020年の量産に合わせて、海外初となる電池用セパレーター工場も建設し始めた。中国の遠景集団(Envision Energy)の傘下に入ったオートモーティブエナジーサプライ(AESC)が無錫市でセル生産能力20GWhの新工場を建設し、NCM811電池を生産する予定だ。

今後、外資系電池メーカーが中国で販売を拡大していけば、苦境にあえぐ地場電池メーカーが増加し、電池価格の下落が加速する可能性がある。結果として、国内市場におけるCATLの収益力低下も想定される。

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