「トラック運転手」その過酷すぎる労働の実態 このままでは「運べない事態」が発生する

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大島:アメリカも1980年代に規制緩和を行っており、これを日本も参考に見ていました。オーナードライバー制など、日本とトラック運送業の仕組みは異なりますが、規制緩和後、アメリカも参入が増えて競争が起きました。でも、アメリカは職業選択の意識が高く、儲からなければ仕事を変える。儲かっていてもビジネスライクに売却することは珍しくありません。数年経つと、参入は落ち着きました。

規制緩和がトラックドライバーを苦しめる結果を招いたと話す大島氏(写真:輸送経済新聞社提供)

一方、日本は家業を継ぐという考えを大切にし、多くが苦しい経営でも事業を続けました。その間も参入企業は増え、現在の企業数は90年比で1.5倍以上に膨れ上がった半面、貨物量はそこまで増えていません。

限られた貨物を取り合ったことで、「荷主は神様」のような状況が起きました。各社とも仕事はほしいので、どんな条件でも引き受けざるをえません。そのしわ寄せが取引条件の厳しさに向かい、ドライバーの労働環境に多くの影響を与えてしまったと言えます。

橋本:これまでの経験を踏まえると、とにかくドライバーの労働環境は過酷で、理由を突き詰めると、最終的には「お客様第一主義」が関係していると感じます。とくに1次輸送のドライバーにとって、お客様となるのはメーカーなどの荷主です。例えば、効率化のために始めたジャスト・イン・タイム輸送は、ドライバーの労働条件で首を絞めていると思います。

労働時間が長い一方、賃金が安い

大島:ドライバーを確保するには、労働環境を改善する以外に手はないでしょう。トラックの場合、労働時間が全産業平均より1~2割長く、賃金が2割安いというのが実態です。このままの状況を続けたら、仮に車が好きな人であっても入ってきません。若者がドライバーになろうとしたところ、家族、知り合いから反対されたケースもあると聞きます。

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橋本:労働環境では、ドライバーのために「よかれと思って」つくられたものが、逆に苦しめていることもあるように感じます。一例を挙げると、(厚生労働省の改善基準告示で)ドライバーは4時間以内の運転で、30分以上の休憩を取ることが義務付けられています。

ただ、多くのドライバーは夜中に車を走らせ、朝荷物を届けるので、高速道路のサービスエリア、パーキングエリアの駐車時間帯が集中し、止めたくても止められません。

それでも法令を守ろうと、本来駐車できない場所に止める人もいますが、今度は周囲からマナーが悪いと見られ、ドライバーの地位が下がる。その結果、人手不足につながってしまう。すごく明確な負のスパイラルが見えているのに、なぜ、これが解決されないのかは疑問です。

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