前途多難のリニア新幹線計画、ルート選びで利害衝突
夢の超高速鉄道計画が、“難所”に差しかかってきた。2025年にリニア中央新幹線の開業を目指すのが、JR東海である。同社は昨年末、建設費などの調査報告書を国土交通省へ提出。今後、国交省の交通政策審議会で議論されるが、計画実現にはまだ問題が山積している。
最大の関門はルート問題。5兆円以上の建設費を全額自己負担するJR東海は、南アルプスを直線で貫く「Cルート」を前提としてきた。これに対し、沿線の長野県は県内の工業地帯である諏訪地域を経由する「Bルート」を主張。両者による1年間の調整も平行線をたどり、報告書には三つのルートが併記された。
リニア新幹線は他の整備新幹線と同じ「全国新幹線鉄道整備法」(全幹法)の枠組みの中で手続きが進められている。長野県の関係者は「全幹法の目的が地域振興であることを考えてもらいたい」と話す。地元が熱望するルートこそ、地域振興という考え方だ。
東京-名古屋間では、直線のCルートの所要時間が40分、建設費は5兆4300億円なのに対し、Bルートは47分で6兆0700億円。高速性や経済合理性から、JR東海は「直線しかありえない」と主張する。しかし今後の用地買収でも長野県の協力が必要不可欠になるため、その意向も無視はできない。
中間駅の着地点はさらに見えない。JR東海は中間駅の建設費を負担しない方針。だが地上駅の建設費は350億円、地下駅では2200億円と試算され、どちらにせよ自治体の体力を大きく超える。
財源次第では駅誘致を断念せざるをえなくなるが、「自分たちに駅がなく、リニアが通過するだけなら、建設に協力したくない」(沿線自治体幹部)と、多くの自治体はただでは降りない姿勢だ。
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