ユーロ急騰をもたらしたのは「ドルの過剰感」 アメリカの財政拡張は円などの上昇も招く
為替市場ではユーロ相場の騰勢が話題である。ユーロドル相場は1ユーロ=1.17ドル台と約1年10カ月ぶりの高値をつけている。過去1週間で見られた加速は7月21日の復興基金合意を受けたものだが、そもそも5月下旬からユーロ相場は一方的に上昇してきた。
筆者のコラム『欧州は難題山積なのにユーロ相場は堅調なワケ』(6月末)や『久しぶりのユーロ相場上昇をどう読むべきか』(7月20日)では、最近のユーロ相場の上昇は「金利差に沿った為替調整が遅れて発生している」のが実態であると述べた。
また中長期的には、『欧州リスク 日本化・円化・日銀化』(東洋経済新報社、2014年)で筆者が強調した、①世界最大の経常黒字、②日本に次ぐディスインフレ通貨という2点がユーロ相場の底上げにつながるという構造は不変であり、ユーロ高の底流にはつねにこの事実がある。
ただ、目先の相場については、IMM通貨先物取引においてユーロの買い持ち高が歴史的な高水準に達していること、名目実効相場(NEER)ベースで天井とみられる長期平均を突破しつつあることなどから、「『1.15~1.20』のレンジにシフトアップする前に調整を挟む可能性」を指摘していた。しかし、現実には目立った調整は訪れず、1.15をあっさり突破し1.17台に乗せており、この点は意外感を覚える。そこで、筆者が考える上昇の理由と今後の展望について改めて整理しておきたい。
ユーロ高の起点は米欧金利差縮小
まず、ユーロ上昇の起点はやはり米欧金利差の縮小と考えてよい。米独10年金利差は、2月をピークとして急縮小に転じ、4月以降は平均1~1.1%ポイントとそれまでの半分で推移し、足元に至っている。
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