ユーロ急騰をもたらしたのは「ドルの過剰感」 アメリカの財政拡張は円などの上昇も招く

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しかし、そのような米欧の金利動向はすぐにユーロ相場を押し上げることにはつながらず、ユーロドルは一時1.06台まで下落し、4~5月の2カ月は1ユーロ=1.08~1.10ドルのレンジで軟調な取引が続いた。ようやく、6月に入ると前半の2週間で2%上昇し、1ユーロ=1.14ドル台をつける場面が散見されるようになった。その後、軟化する時間帯を挟んだものの、5月下旬からレンジが1.12~1.14へシフトアップ。そして、7月下旬、復興基金合意を契機としてついに1.15台に乗せ、足元では1.16台をあっさり通過し、1.17台まで駆け上がっている。急騰といってよい。

後講釈を承知でいえば、やはり4月時点で従前の半分程度にまで縮小していた米欧金利差に応じた調整がラグを伴って到来しているように思われる。もちろん、マイナス0.50%という先進国の中でも大きな金利のマイナス幅はユーロを保有する明確なデメリットだが、過去3カ月間の「米欧金利差の変化幅」はユーロ買いを肯定するもので、これが買いの起点になったのだろう。

しかし、金利差縮小という「方向感」がユーロ買いの「きっかけ」になったとは思われるが、「マイナス0.50%」という政策金利の「水準感」を思えば、金利差縮小がユーロ買いを加速させる主因になるとは思えない。筆者はユーロ急騰の理由は「ドルの過剰感」であると考えている。

財政赤字急拡大で「ドルの信認」が焦点になりうる

アメリカの拡張財政路線は異次元の規模に突入している。現在、トランプ政権とアメリカ議会が3月以降で実施した財政出動は約3兆ドルとGDP(国内総生産)比で15%以上の規模に及ぶ。このうえで7月中には追加で(公式には第4弾として)約1兆~2兆ドルの臨時歳出が議論されている状況にある。失業給付の積み増し延長や給与税減税(復職ボーナス)などを主軸に調整が進められており、仮に約2兆ドルの追加案が決まれば、コロナ対策のスケールは約5兆ドルに達することになる。これは2019会計年度の歳出額(約4.4兆ドル)を優に超える額だ。

ちなみにコロナショック以前、2019会計年度の赤字は0.9兆ドルと想定されていたので、ここに5兆ドルを加えると赤字額は約6兆ドル、すなわちGDP比で約30%という規模に上る。過去50年平均で、アメリカの財政赤字はGDP比3%だったので、今年度の財政赤字は「過去50年平均の10倍」という歴史的に見ても想像すらしなかった規模ということになる。

第4弾の臨時歳出はこれまでの措置が7月いっぱいで失効することで発生する下押し効果、いわゆる「崖効果(cliff-edge effect)」を回避するための措置であり、必要にして緊急なものではある。だが、財政赤字の規模が、為替市場で「ドルの信認」が焦点となってもまったく不思議ではない水準になるのも確かだ。

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