旭化成、コロナ禍で見えた多角化の強みと課題 小堀社長「商売のやり方を変えないといけない」

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――旭化成は事業領域が多岐にわたり、いわゆる「コングロマリット経営」ですが、今回のような混乱を経て、その強みと弱点をどう認識していますか。

こぼり・ひでき/1955年生まれ。1978年神戸大学経営学部卒、旭化成工業(現旭化成)入社。電子部品部門の担当役員を経て、2012年に常務執行役員(経営戦略・経理財務担当)。2016年4月から現職(写真:旭化成)

われわれは、マテリアル、住宅、ヘルスケアの3事業領域で5つの価値(環境・エネルギー、モビリティ、ライフマテリアル、ホーム&リビング、ヘルスケア)を社会に提供している。

「日本企業も欧米企業のように選択と集中をすべき」といった論調が一時強まった。だが、特定の顧客層に依存する単一事業であるよりも、多くのコア事業とさまざまな販売チャネル、多様な人材を抱えている会社の方が経営の安定性は高い。今回のような危機にも強く、時代の変化にも対応しやすい。

地域戦略の再考が必要になる

――コロナの収束にはまだ時間を要します。成長戦略は変わりますか。

事業ポートフォリオの変革のスピードをあげ、新規事業の創出を急ぐ必要がある。コロナ後の社会がどうなっていくのか。その中で厳しい事業は早く出口戦略を考えないといけない。

また、コロナの前から顕在化していたアメリカと中国の貿易戦争も大きな懸念材料だ。11月のアメリカ大統領選の結果がどうであれ、この対立は長期化しそうなので、サプライチェーンを含めた地域戦略の再考も必要だろう。

――事業ポートフォリオの変革では具体的に何を?

 ウィズコロナ、アフターコロナを考えた場合、事業としていい方向に行くもの、悪い方向に行くものが混在している。

前者の代表がヘルスケア。今までは豊かな暮らしや快適さが求められたが、当たり前だと思われてきた人の命、健康の大切さ、ありがたさが改めて認識された。一時的な医療現場の混乱はあるにせよ、中長期で見ればヘルスケアはこれから重要な価値を提供できる分野だ。

コロナ後の「新常態」とどのように向き合っていくべきなのか。「週刊東洋経済プラス」では、経営者やスペシャリストのインタビューを連載中です。(画像をクリックすると一覧ページにジャンプします)

一方で、厳しいのが自動車関連。当社の注力分野だったが、新車販売台数がコロナ前の水準に戻るには3年かかるという見方もある。CASE(コネクティッド・自動運転・シェア・電動化)対応の研究開発費が重くのしかかっていたところに、コロナ禍で新車販売が落ち込み、自動車産業の経営は厳しくなっている。

完成車メーカーが限られた予算をどこに優先的に振り向けるか、CASEの先頭を走る自動車メーカーはどこなのか。しっかりと変化を見極めて、われわれも商売のやり方を変えないといけない。

「週刊東洋経済プラス」のインタビュー拡大版では、「今後の自動車関連事業の具体的な戦略」「企業買収に対する考え方」「コロナ禍で痛感したこと」などについても語っている。
渡辺 清治 東洋経済 記者
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