「電力会社よ、稼ぎ頭捨てよ」宣告の強烈な衝撃 旧式だが高収益の石炭火力発電に不適格の烙印

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なぜ経産省は非効率設備の退出を求めるのか。背景には、脱炭素化へ向かう世界の潮流がある。

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経産省の幹部は、「高効率の石炭火力発電所の新たな運転開始が見込まれる中で、2030年度のエネルギーミックス(電源構成)目標を確実に達成するためには、非効率な石炭火力を限りなくゼロにしていく必要がある」と説明する。

パリ協定に基づいて政府が提出した温室効果ガス削減目標(2030年度に2013年度比26%削減)の達成に向け、石炭火力発電の割合は30年度に全体の26%まで引き下げなければならない。しかし、現在は32%と、その目標を6%ポイントもオーバーしているうえ、100万キロワットクラスの大型のものを含めて17基の石炭火力発電所の新設・リプレース計画が全国に存在する。

仮にそれらすべてが稼働し、非効率な石炭火力も運転を続けると、石炭火力発電への依存度は40%近くに達してしまう可能性がある。そうなれば、温室効果ガス削減の国際公約を守れず、世界から批判が集中しかねない。

旧式石炭火力のフェードアウト方針は2年前に決定

実は、非効率な石炭火力のフェードアウト方針は今回決まったものではない。2018年7月に閣議決定された現行の第5次エネルギー基本計画で、「フェードアウトを促す」と言及されている。だが、何ら具体策が講じられることのないまま2年の歳月が経過していた。

現行のエネルギー基本計画は、2021年夏までに見直し検討の着手をすることが法律で定められている。それまでに手を打たなければ、経産省は不作為との批判を免れない。その意味でも今回、フェードアウト方針に基づく具体的な検討が始まることに驚きはない。

今も政府は、石炭火力をやめさせたり、2030年度の目標比率26%を引き下げたりする方針は示していない。梶山経産相は「資源の乏しいわが国において、エネルギー源のベストミックス(多様化)のうえでも、(石炭火力を含む)1つひとつの電源は放棄できない」と断言している。現在のエネルギー基本計画で石炭火力は「安定供給性と経済性に優れた重要なベースロード電源」とされている。「高効率」とされる超々臨界圧以上の新設計画に規制は設けない。

しかし、将来にわたって石炭火力が優位性を発揮できる保証はない。2050年における温室効果ガスの80%削減目標を掲げているからだ。実現を目指す場合、大気中にCO2を大量排出する発電の継続が困難になる。従来型火力の退出を促す炭素税の本格導入も視野に入ってくるだろう。

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