「電力会社よ、稼ぎ頭捨てよ」宣告の強烈な衝撃 旧式だが高収益の石炭火力発電に不適格の烙印

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タクソノミーは確定したものではない。TEGの最終報告書をベースに、欧州委員会がタクソノミーに関する法律に基づいて今年12月に具体的な規則を発表することになっている。だがその際には、「TEGの報告書に記載された内容が、ほぼそのまま用いられることになるだろう」とEUタクソノミーに詳しい水口剛・高崎経済大学教授は解説する。

そのうえで水口氏は、「欧州委員会によるタクソノミーの決定は、欧州の投資家に対してある種の強制力に相当する影響を与える」と見通す。というのも、「欧州委員会が定めた別の規則により、投資家がどれだけグリーンな投資をしているか、投資においてサステイナブルリスクを考慮しているかについて情報開示する際の判断基準としてタクソノミーが用いられる」(水口氏)からだ。

EUはこのように金融を通じて、グリーンに区分された分野への投資を誘導しようとしている。エネルギー分野においては、太陽光や風力など再生可能エネルギーがそれに該当する。

欧州委員会は昨年12月、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにするなどの目標を法制化する「欧州グリーンディール」を公表し、新たな成長戦略に位置づけた。新型コロナウイルスのパンデミックのさなかであっても、グリーン経済への移行戦略に、ブレーキをかけていない。それどころか、アクセルをさらに踏み込もうとしている。その象徴が5月27日に欧州委員会が提案したコロナ禍からの復興計画「次世代EU」だ。

同計画に基づきEUは、今後の経済復興において、エネルギー転換を含む温暖化対策をさらに加速していく。

欧州委員会が明らかにした「水素戦略」

そのことを象徴する動きとして7月8日、欧州委員会は再エネ由来の電力を用いた水素製造を柱とする「水素戦略」を明らかにした。

欧州は将来の温室効果ガス排出ゼロから「バックキャスト」(逆算)して、さまざまな目標や制度を設計しようとしている。タクソノミーもそのツールの1つであり、EUの戦略的思考を裏付ける。

日本での最近の動きも、EUの動きを参照しながら見ると、その意味するところを理解しやすい。

経産省は非効率石炭火力のフェードアウトの具体化と併せて、送電線の利用ルールを抜本的に見直す方針を打ち出した。これまでは、先に接続していた事業者の電力を優先して送電線に流せるというルールだった。これを、再エネ電力のほうが火力発電の電力よりも優先して流せるように改める。洋上風力発電の拡大を念頭に置いた見直しだ。

こうした再エネ優先ルールは、EUですでに導入されており、再エネ大量導入の道を開いている。

日本ではこれまでエネルギーの制約から脱炭素化は絵空事と見なされてきた。それが今や企業のビジョンや成長戦略の柱として語られるようになってきた。日本経済団体連合会が音頭を取る形で、脱炭素化を目指す企業連合の「チャレンジ・ゼロ」が動き出したのも危機感の表れだ。脱炭素化の潮流を理解し、自らを変革できた企業だけが生き残る。

『週刊東洋経済』8月1日号(7月27日発売)の特集は「脱炭素 待ったなし」です。
岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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