学校制服「価格つり上げ」生むいびつな流通構造 愛知で学生服のカルテル、3社に排除措置命令

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複数の関係者によると、今回のカルテルが発覚したきっかけは大丸松坂屋の密告だった。大丸松坂屋は2018年にもJR東日本の制服受注で談合を行っていたとして公取委から処分を受け、社内のコンプライアンス強化を進めていた。制服販売事業からの撤退を決めたこともあり、豊田市でのカルテルについても白状するに至ったようだ。

しかし、ある制服メーカー幹部は「いろんな地域で同じようなことが行われているから、『ああ、バレちゃったのか』という程度に感じた。1回の行政処分くらいで業界が大きく変わることはないだろう」と語る。業界関係者にとって販売店間での共同値上げは大した驚きに感じられないほど、学校制服業界は特殊かつ閉鎖的な市場だ。

学校制服は通常、生徒の進学先決定後の年末~3月ごろに採寸し、4月の入学式までに納品を間に合わせる必要がある。短納期とともに、3年間にわたり着続けられる品質や耐久性の高さも求められるため、ほとんどの学校制服は国内生産だ。

国内の学校制服市場はトンボ、菅公学生服、明石スクールユニフォームカンパニーの大手3社が過半のシェアを握る。過去に参入を検討したアパレル企業の幹部は「流行や天気に左右されず底堅い収益は見込めるが、少子化で需要が先細りすることや(裾上げや修理など)アフターフォローにかかるコストを考慮すると割に合わないと判断した」と語る。

参入障壁の高さも一因となり、制服の価格は上昇傾向が続く。総務省の小売物価統計調査によると、公立中学校の制服の平均価格は、2019年は男子用が約3万3700円、女子用が約3万2200円と、2005年と比べて2割弱値上がりした。

ウール生地の高騰が値上げ要因に

制服メーカーにとっては、値上げせざるをえない苦しい事情がある。少子化で1校当たりの生徒数が減り、少量多品種での生産が増えたことに加え、大半の学校制服で使用されるウール生地が高騰しているためだ。

毛織物大手のニッケ(日本毛織)は羊毛価格の上昇などを理由に、今年4月の出荷分から5年ぶりに学生服用のウール生地を10~15%値上げした。制服の原価のおよそ4割を占める生地が値上がりすれば、制服の仕様を見直さない限り、価格に転嫁するしかない。

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