学校制服「価格つり上げ」生むいびつな流通構造 愛知で学生服のカルテル、3社に排除措置命令
およそ半世紀ぶりに、学校制服に対する行政処分が下された。
公正取引委員会は7月1日、愛知県豊田市にある県立高校6校の制服販売において価格カルテルを結んでいたとして、同市の販売業者3社に対し、独占禁止法違反で再発防止を求める排除措置命令を行った。
公取委が学校制服の取引に対して法的措置をとったのは、1973年の岡山県の被服工業組合であった男女の制服の価格カルテル以来、実に47年ぶり。今回のカルテルには豊田市の販売業者3社のほか「松坂屋豊田店」を運営する大丸松坂屋百貨店も関わっていた。大丸松坂屋は違反行為を自主的に申告したことや、今年3月に制服事業から撤退したことを考慮し、排除措置命令の対象外とした。
喫茶店や駐車場で値上げを協議
大丸松坂屋を含めた4社は遅くとも2015年5月以降、地元の喫茶店や高校の駐車場に担当者らが集まり、制服の販売価格を共同で引き上げることで合意。「○○%程度の値上げをしよう」などと話し合い、値上げ案をまとめた価格表を作るなどしていた。
共同で制服の値上げが行われた県立高校6校は、4社以外に指定販売店がなく、生徒は基本的にカルテルを結んでいた販売店でしか制服を買えない状況にあった。6校の制服販売価格は2015年度以降に平均で8%程度値上げされ、6校の制服の2018年度の平均販売価格は6万1635円と公立高校の制服の全国平均と比べて約11%高かった。
「原材料費など(の高騰で仕入れ価格)が上がり、利益を確実なものにしたかった」。公取委によると、豊田市の販売業者は共同で値上げを行った理由をそう話している。公取委が昨年秋に立ち入り検査を始めた後、一部の販売店は高校の男子用冬服の販売価格を5~7%程度下げたという。
全国的に学校制服の値上がりが続く中、公取委は2017年に公立中学校の制服の取引実態に関する報告書を発表。適正な価格競争を実現するため、学校がメーカー選定に際してコンペを行ったり、指定販売店を増やしたりすることなどを提言していた。公取委審査局の担当者は「家計で支出する教育費の中でも制服はそれなりの割合を占め、学校制服の価格に対する世間の関心は高い。特殊性の高い市場だが、自由な競争が促されるようになってほしい」と強調する。
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