大統領選に陰を落とす「バイデン」最大の弱点 トラプ大統領と同じことを言い始めている

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1年以上前に選挙運動を開始して以降、バイデン氏は演説で、ウォール街はアメリカ経済の真のエンジンではない、と繰り返してきた。しかし、9日の演説では「株式資本主義を終わらせるべきタイミングは、とうの昔に過ぎている」と言い放ち、ポピュリスト的なトーンを強めている。

バイデン氏はとりわけ、コロナ禍で何千万人というアメリカ人が失業保険の申請を余儀なくされているさなかに、成功の指標として株式市場に焦点を当てた点で、トランプ氏を非難した。「今回の危機にあっても、ドナルド・トランプはほとんど株価のことしか頭にない。(彼が気にかけているのは)ダウやナスダックだ。あなたや、あなたの家族ではない」(バイデン氏)

バイデン氏は8月の民主党全国大会までに経済政策を4回にわけて発表する予定で、9日の演説はその第1弾だった。陣営幹部によると、第2弾は最新のインフラとクリーンエネルギー、第3弾は「21世紀型の働き方と(有給の)育児・病気休暇」の確立がテーマで、これに「アメリカにおける人種的公平性を推進」する方策を示す第4弾が続く。

極左サンダース氏との統一戦線

バイデン氏はこれまでのところ、自身の支出プランは約4兆ドルの増税によって賄うとしている。その大半は、トランプ氏の看板政策である高所得者減税の一部撤回、および富裕層・法人に対する増税によるものだ。側近によれば、9日に発表された研究開発支援や米国製品を対象とした政府調達の拡大についても、バイデン氏は同様の方法で財源を確保する考えだという。

ただし、バイデン氏はパンデミックが引き起こした景気後退から経済を再生するために、来年については一段と財政赤字を拡大する提案を行うことになる、とも側近は語る。議会とトランプ氏はすでに3兆ドルを超す借金を承認しているが、そこからさらに国債を増発し、政府支出を積み増すということだ。

バイデン氏の経済政策には、さらに新たなプランが付け加わる可能性もある。バイデン氏とサンダース氏の間で政策を擦り合わせる「統一タスクフォース」は8日、110ページに及ぶ政策文書を発表。そこで示された経済分野の提言には、公共事業などで国民を雇うニューディール方式の連邦雇用プログラムのほか、黒人と白人の格差縮小に向けて、政府が資金を拠出・運用する貯蓄口座を新生児全員に与える「ベビー・ボンド(赤ちゃん債)」構想などが含まれる(編集部注:後者は所得再分配の一種で、低所得世帯ほど毎年の投資額が大きく設定される)。

黒人労働者はコロナによる不況でとりわけ大きな打撃を受けており、バイデン氏は発展段階にある政策提言の中心に人種格差の問題を据えるはずだ、と同氏の顧問らは語った。

統一タスクフォースに参画するオハイオ州立大学の経済学者、ダリック・ハミルトン氏は網羅的な経済政策の立案について、こう話す。「人種は課題の1つではない。政策の柱だ」。

(執筆:Shane Goldmacher記者、Jim Tankersley記者)
(C)2020 The New York Times News Services

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