ポスト安倍レースかき乱す「二階幹事長」の思惑 石破氏に接近、岸田氏にエールの狙いとは

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このトップ会談は、首相サイドが「お時間があれば」と持ち掛けたとされる。国会閉幕後も政府のコロナ対応への批判などから内閣支持率が低迷しており、安倍首相としても二階氏との連携をアピールすることで、求心力回復を狙う思惑もちらつく。

会談内容は明らかにされていないが、 「党・内閣人事や今秋解散の是非について、お互いの腹の内を探った」(自民幹部)のは間違いなさそうだ。安倍首相は二階氏が自民党実力者との会談を繰り返す狙いを探り、幹事長続投を狙う二階氏は安倍首相の感触を探るという「生臭さ満載の会談」(同)とみられている。

「二階発言」で流れが変わる政局

二階氏はこれまで、混戦模様のポスト安倍レースに絡めて安倍首相の4選にも言及するなど、「変幻自在な二階流」(側近)で真意をつかませないできた。二階氏は、安倍首相を筆頭とする世襲政治家とは対照的な「たたき上げの党人派」(自民長老)で、したたかな腹芸で「政界の絶滅危惧種」(同)とも呼ばれている。

その一方、二階氏は野党出身議員を相次いで二階派に迎え入れることで派閥拡大も進めている。これらの野党出身議員は各派閥の現職と選挙区で競合するケースが多く、次期衆院選に向けて「激しい二階氏への反発」(岸田派幹部)にもつながっている。

22日からのGoToトラベル事業でも、政府の迷走ぶりが国民の強い批判にさらされた。とくに、都知事選で圧勝した小池百合子知事と事業推進役の菅官房長官のあつれきが政権不信を拡大させている。

その小池氏を都知事選で全面支援したのは二階氏で、小池氏も二階氏の幹事長続投に強い期待を示しているとされる。GoTo事業の混乱についても、安倍首相と二階氏がそろって沈黙を守り、政府は菅氏が、自民党は岸田氏らが全面に出てそれぞれの立場で発言しているのも「何やら意味ありげ」(閣僚経験者)ともみえる。

二階氏はすでに81歳と高齢で、体調不安説もささやかれている。相次ぐ政局向け発言についても、「その場の思いつきでは」(政府筋)といぶかる声が少なくないが、「二階氏の発言が政局の流れを変えている」(二階派幹部)のは事実だ。

東京でのコロナ感染再拡大が国民の不安をかき立て、「政局秋の陣もすべてはコロナ次第」(閣僚経験者)ではあるが、複雑なポスト安倍レースのカギを握るのは安倍、麻生、菅、二階の4実力者であることは間違いない。二階氏周辺からは「狙うはポスト安倍での最強のキングメーカー」(側近)との声も出る中、今回の二階劇場の結末はまだまだ見えてこない。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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