しかし、今回の手当と引き換えになる「増収策」として、再び「年中無休プラン」が経営陣から提示された。これに対して、教職員たちの間には、静かな怒りが広がったという。
「一般的に大学病院には、経営側と職員にファミリー的な関係性があるものですが、女子医大にはそれがない。経営側に職員たちへの愛情が感じられないから、短期間で辞めていく看護師が多い。もし温かい病院なら、長く働いてくれるものです」(前述の女子医大・関係者)
女子医大・経営陣の強権的な姿勢。その背景には、2つの後ろ盾があるといわれる。
自民党の大物政治家「二階俊博幹事長との強いパイプ」、そして女子医大の同窓会である「至誠会」だ。
7月16日の記事で示したとおり、二階幹事長の母・菊枝(故人)は、女子医大の出身で、和歌山県の保健所医師だった。
女子医大のトップを務める、岩本絹子理事長は女子医大出身の産婦人科医。創業者一族でもあり、同窓会組織である一般社団法人、至誠会の会長職を兼務する。
至誠会は、単なる同窓会ではない。東京・世田谷区に300床の病院を持ち、看護学校も運営している。女子医大の理事会では、至誠会のメンバーが多数を占め、岩本理事長の絶大な権力を支えているのだ。
「大学病院の年中無休プランは、どう考えても強引だし、非現実的です。それを岩本理事長に進言できる人がいない。女子医大の中でも、至誠会の影響力は圧倒的なので、意見した職員はクビにされてしまうと恐れられているのです。まさに独裁者ですよ」(女子医大関係者)
東京女子医大の栄光と転落を知る医師
「私が入局した当時、女子医大は心臓の手術件数は国内ダントツで、世界的にも評価されていました。心臓外科の分野では、間違いなく日本のトップです」
心臓外科医の佐藤一樹氏は、山梨医科大(現・山梨大医学部)を卒業後、1991年に女子医大・循環器小児外科に入った。
安い給料に、尋常とはいえないハードワーク。良家の子女がそろう女子医大出身の女性医師は、体力的についていけなかったという。
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