米国「コロナ患者情報」非開示になる懸念の背景 データがCDCを通さず政府に送られるように
「アメリカはリアルタイムのデータを必要としている。わが国が新型コロナに打ち勝つために必要なのは、新しくて、より速く、完全なデータシステムだ。CDCは保健福祉省の業務を執行する1部局であり、この効率化された政府総がかりの対応プロセスに間違いなく参加する。彼らはただ、指揮する立場でなくなるだけだ」
しかし、保健福祉省のガイダンスに記された病院への指示では、次のようにはっきりと強調されている。「2020年7月15日以降、病院は当文書記載の新型コロナ関連情報を全米医療安全ネットワーク(NHSN)のウェブサイトに報告しないこと」。同ネットワークは、全国2万5千以上の医療センターからデータを収集するCDCのシステムだ。
公衆衛生の専門家は以前から、トランプ政権が科学を政治化し、保健専門家、とりわけCDCの権限を弱めていることに懸念を表明してきた。共和党政権時代と民主党政権時代の両方にまたがる4人の元CDC所長は14日、ワシントン・ポスト紙に連名で意見記事を寄稿し、ずばりそのように書いている。データ収集に関する今回の変更で、こうした懸念はいっそう強まった。
オバマ前大統領の下で事前準備・対応担当次官補を務めたニコル・ルーリー氏は「本質的に政治的な組織の下にすべてのデータのコントロール権を集中させるのは危険だし、不信を生む」と指摘する。このような動きは「CDCのような機関の基本的な職務遂行能力を阻害するものと映る」。
怪しげな随意契約
保健福祉省は今回のガイダンスで、病院は今後、詳細な情報を毎日、ピッツバーグの保健データ会社「テレトラッキング」が管理する集中型システムに直接報告しなければならないとしている。しかし、病院が現にそのような情報を州に報告している場合には、州が報告を処理するとの同意を書面で得ることを条件に現状の方式を維持することもできる。
上院保健委員会で民主党の代表を務めるパティ・マレー上院議員(ワシントン州選出)はテレトラッキングとの契約に疑問を呈し、これを「重複した保健データシステム」のための「数百万ドルの随意契約」と呼んだ。
クリントン政権で保健福祉長官を務めた民主党のドナ・シャレイラ下院議員(フロリダ州選出)は、保健データを集めるのにふさわしい機関はCDCだと語った。CDCのシステムに欠陥があるのなら、それを修正するべき、という立場だ。
「保健データ収集に関する専門知識を備えているのはCDCだけだ」とシャレイラ氏は主張する。「専門知識を持つ人々から権限を奪う動きは、それがいかなるものであろうとも、政治的な裏があると考える」。