米国「コロナ患者情報」非開示になる懸念の背景 データがCDCを通さず政府に送られるように
トランプ政権は病院に対し、新型コロナウイルス患者全員の情報を7月15日からアメリカ疾病対策センター(CDC)を通すことなく、政府の中央データベースに直接送信するよう命じた。この措置について医療の専門家は、データが政治利用されたり、一般に開示されなくなったりするのではないかと警戒を強めている。
今回の指示を記載した文書は、保健福祉省のウェブサイトに掲載されているがほとんど認知されていない。これからはCDCではなく同省が、各病院が治療している患者、利用可能なベッドと人工呼吸器の数、その他パンデミックの追跡に不可欠な情報を日々収集することになる、というものだ。
当局によると、今回の変更はデータ収集の効率化に加え、保護具や新型コロナに対する効果が初めて認められた薬「レムデシビル」など逼迫した物資を配分するうえで、ホワイトハウスの新型コロナ対策本部を支援するのが狙いだという。しかし、情報が蓄積される保健福祉省のデータベースは一般公開されていないため、CDCのデータを使って予測や重大決定を行ってきた大勢の研究者、予測専門家、保健当局者の仕事に支障が出る恐れがある。
衝撃に見舞われるCDC
「公衆衛生のデータはこれまでCDCに送られていた。今回の動きは研究者のデータ利用のみならず、パンデミックで起こっていることを詳しく知ろうとするメディアや一般のデータ入手にも不安を投げかけるものだ」と、無党派の非営利組織、カイザー・ファミリー財団で国際保健・HIV政策を担当するジェン・ケーツ氏は語る。
そして、こう問いかけた。「データはどう保護されるのか。透明性はあるのか、アクセスはできるのか、データ分析においてCDCはどんな役割を果たすのか」。
2人の職員によると、変更の知らせにCDCは衝撃を受けたという。これらの職員は、この問題について公式にコメントする権限がないとして匿名を条件に取材に応じた。保健福祉省の報道官、マイケル・カプート氏は、CDCのシステムを不十分と評価し、保健福祉省のシステムとリンクさせることになると語った。同氏は、CDCは引き続きデータを公開するだろうと述べた。
「現在、CDCが病院データを報告するのに少なくとも1週間の遅れが生じている」とカプート氏は言う。