こうした状況下、中国で最大の問題は雇用の創出だ。
7月16日の記者会見で、国家統計局の劉愛華報道官は「6月には全国の20~24歳で学歴が短大卒以上の層の失業率は19.3%に達した。5月より2.1ポイント、前年同期より3.9ポイント上昇している」と明かした。その多くは新卒者だという。また、農村から都市への出稼ぎ者の数は6月末時点で前年より496万人、率にして2.7%の減少だった。
GDP発表の前日には、李克強首相が国務院(内閣)の会議で大学卒業生や地元に帰った出稼ぎ者の就業支援策を打ち出している。こうした人々が起業する際には遊休地を無料で貸し出す、Uターンして起業し、経営を一年以上続けた場合は奨励金を支給する、といった支援メニューが用意された。雇用吸収力の大きいサービス業が苦戦するなか、李首相は「露店」の振興を呼びかけるなど対策に懸命だ。
消費底上げは先進国の回復が頼み
日興アセットマネジメントの神山直樹チーフ・ストラテジストは「中国では生産の回復が先行しているが、経済全体としてはうまく行っていない。国民が安心して消費できるようになるには(輸出増のため)先進国の経済がよくなる必要があり、リーマンショック当時のように中国が世界を牽引する構図ではない」と指摘する。
しかし、現実には欧州や米国の経済は中国よりずっと厳しい。1-6月の欧州連合(EU)の輸出入は1.8%減、米国の輸出入は6.6%減だった。これに対して上半期の中国のASEAN向け輸出入額は5.6%増となり、結果的にASEAN(東南アジア諸国連合)は中国の最大の貿易パートナーとなっている。
米中対立も激化する一方で落としどころが見えない。最近では南部で4000万人もの被災者を出す大洪水が起きている。難問山積だが、2021年の共産党創立100周年、2022年の党大会を控えて、財政出動などのカードをいま使い切るわけにもいかない。
雇用対策とバブル予防の二正面作戦には、繊細な注意を要する。V字回復のように見えて、中国経済の先行きは決して楽観できない。
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