香港カレンシーボードに飛び火した米中対立 禁断の米ドル取引制限のリスクを見ておく

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事実、国家安全維持法が成立した5月下旬のように香港ドル米ドルのフォワードレートに動揺(香港ドルの急落)が生じているわけではない。市場はまだ冷静に見ている。

むしろ現状は逆の動きを示している。こうした米国の政治的な動きに抗うように、中国本土に拠点を持つ投資家が香港株式市場に莫大な資金を注ぎ込んだことで香港ドル需要は逼迫が伝えられており、香港ドルの対米ドル相場は7.75の上限に張り付いている。結果、HKMAは連日、香港ドル売り・米ドル買い介入に勤しんでいる。

トランプ政権だからこそ構えたい「理外の一手」

とはいえ、国家安全維持法の制定によって、香港においてはインターネット上の書き込み削除はおろか通信の傍受や令状なしでの家宅捜索、そして旅券の押収などが合法的にまかり通るようになっている。体面上、米国がこれに対して何もしないというわけにはいかず、相応に厳格な対応に踏み込む可能性は否めない。

通商交渉を例に出すまでもなく、トランプ政権は「返り血」覚悟で理外の一手を乱発してきた経緯がある。可能性は非常に低いと思われるものの、カレンシーボードが米国側から技術的に崩され、国際金融市場が動揺するリスクは念頭に置く価値はある。その場合、金融市場にとっては株を筆頭とするリスク資産が手放され、為替市場においてはドルを除く安全通貨として円やユーロ、スイスフランが物色されると見ておきたい。

※本記事は個人的見解であり、筆者の所属組織とは無関係です

唐鎌 大輔 みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト

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からかま・だいすけ / Daisuke Karakama

2004年慶応義塾大学経済学部卒。JETRO、日本経済研究センター、欧州委員会経済金融総局(ベルギー)を経て2008年よりみずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)。著書に『弱い円の正体 仮面の黒字国・日本』(日経BP社、2024年7月)、『「強い円」はどこへ行ったのか』(日経BP社、2022年9月)、『アフター・メルケル 「最強」の次にあるもの』(日経BP社、2021年12月)、『ECB 欧州中央銀行: 組織、戦略から銀行監督まで』(東洋経済新報社、2017年11月)、『欧州リスク: 日本化・円化・日銀化』(東洋経済新報社、2014年7月)、など。TV出演:テレビ東京『モーニングサテライト』など。note「唐鎌Labo」にて今、最も重要と考えるテーマを情報発信中。

※東洋経済オンラインのコラムはあくまでも筆者の見解であり、所属組織とは無関係です。

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