今回取材した台湾の明光義塾社長の楊氏は、台中を基盤に18校6600人の塾生を擁する百大教育グループの執行長だ。中華民國補習教育全国総会副総会長、台中市補教協会副理事長も務める、台湾の学習塾業界に精通した人物だ。
楊氏によると、台湾の塾は現在1万7000軒ほどあり、その約80%が進学関連で、最も大きいのは中高生の市場。残りの20%は言語習得や公務員などの資格試験対策、留学対策、音楽や美術、調理や裁縫などの技能系、スポーツなど様々だという。
冒頭に述べたような、台湾における競争の激しい塾市場において、どういった考えから日本の明光義塾とコラボレーションしようと思ったのだろうか。
「今の日本で起こっていることは、近い将来台湾でも起きる可能性が高いんです。そのひとつが少子化で、私は塾経営者としてその打開策を探していました。台湾の小中高で使われる教科書に約40%のシェアを持つ台湾最大手の教育系出版社・翰林出版でさえもそれは同じでした。
そこで我々は日本の個別指導市場を切り開き、成功させた明光義塾にコンタクトを取りました。
講師一人が多数の生徒を教える学習塾はすでにたくさんあり、レッドオーシャンです。講師たちは多くの生徒を満足させる技術を備えたすごい人材です。ただ、その中には数が少なくても、その授業スタイルに合わない生徒もいるはずだと考えました」
次に打つ手の手がかりは日本にある
「私が明光義塾に関心を持ったのは『自分で考えて答えを導く力』を付ける指導を行うことです。台湾の塾業界の定石はすぐに点数が上がることを謳うことですが、明光義塾は勉強が好きになったり、問題を解決する力が徐々に備わってくる。この点は生徒にも保護者にも実感してもらえています。
少子化の中にも生存のための希望はある。台湾では昔から『個別指導は商売にならない』と言われてきましたが、明光義塾は日本でそれに成功している。我々が次に打つ手の手がかりは、日本にあると思いました。
台湾の塾の97%以上が、一人の講師が多数の生徒に向けて教えるスタイルです。2019年時点で日本は個別指導が46%を占めていますが、台湾ではまだ3%ほどしかありません。大多数が商売にならないと思っているんです。だから我々は今ブルーオーシャンにいるのです」
日本企業による台湾進出は2010年ごろから、小売・サービス業を筆頭に活発になっている。親日だから比較的容易だと思われる台湾進出だが、実は撤退する企業も多く、そんなに容易いものではない。そんな中で合資会社である台湾の明光義塾は今のところ好調のようだ。
秘訣はいったいどこにあったのか。
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