そんな中、今回取材してみたのが明光義塾だ。個別指導による学習塾を日本各地に2100カ所展開する大手だが、2015年に台湾に進出、それからわずか5年で教室総数が82カ所(2020年6月現在)となり、台湾で最大規模の個別指導学習塾になっている。
台湾の明光義塾を運営するのは、3社の合資で2015年に設立された、明光文教事業股份有限公司だ。日本の明光義塾、台中を基盤に18校6600人の塾生を擁する百大教育グループ、そして台湾最大手の教育系出版社である翰林出版が出資している。
社長に当たる総経理の楊佳叡氏によれば、台湾政府が冬休み明けの新学期を2週間延期した際、学習塾は休学要請もなく営業を続けたという。
「SARSの時に苦い経験がありましたので、2月初旬、春節休み明けの仕事始めから自主的に防疫対策を始めました。教室内や入校の際の両手の消毒、マスク着用や検温はもちろん、従業員の海外出国を禁止しました。生徒および同居する家族や親戚に海外から戻られた方がいた場合、その生徒には14日間教室に来ないようお願いしました。
その頃はまだ政府による隔離用ホテルも用意されていませんでしたから、海外から戻って万一感染していた場合、家庭内での感染は避けられません。一人二人の生徒が不便な思いをするかもしれませんが、それで他の全ての生徒や従業員の仕事を守れるのです。もちろん教室に来られなかった分の授業は、後から振替授業でカバーしました。
政府から言われる前から、自主的にそれだけ厳格に対処していたので、生徒の保護者も安心して塾へ行かせようと思ってくださったのでしょう。コロナ禍で生徒の新規加入は減りましたが、既存の生徒は減少しませんでした」
日本の塾業界では、今でこそ感染防止に全力を挙げているが、学校が休校になっても営業を続けたり、国からの要請があったにも関わらず対面授業を続けた塾も少なくなかった。それに比べれば、台湾の明光義塾の初期対応は迅速だったといっていい。
「今回、急遽オンライン授業の体制を強化しましたが、利用者はほとんどいませんでしたね。皆さん教室まで来て学んでいました。教育はどうしても対面の方が効果が高くなりますし、生徒もこの場所が好きだからと教室へ来てくれます」
日本ではリモートワークやリモート授業のニーズが爆増したというが、ここ台湾ではそこまでその動きはなかったようだ。
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