トランプ再選可能性は「黄信号」へ改善している 失言続きで世論調査も劣勢なのに本当なのか
筆者には、この状況は、1992年に宿敵のソ連共産主義を倒し、目標を達成、その後クリントン政権時代のユーフォリア(熱狂的な陶酔状態)を経て、現在の分裂の危機に至った今のアメリカと同じに思える。だが、新しい国家が生まれた直後の分裂の危機と、240年後、その国が世界史上初めての単独覇権国家という頂点を極めた後の分裂の危機は同じ結果をもたらすだろうか。
前回の「コロナショック後のアメリカに訪れる暗い結末」では、「4thターニング理論」の概略(世の中は4つの小さな周期からなる約80年サイクルで回り、そのサイクルに各世代が大きく影響を受けること)を説明した。アメリカでは「最初の80年サイクルの4thターニング(4つめのサイクルにおける転換期)は、この独立時の混乱を指す。
2度目は、奴隷制度を巡って国内が血みどろの戦いとなった南北戦争(1861~1865、この時のアメリカは、独立戦争からイラク戦争まで、対外戦争でのすべての戦死者に匹敵する70万人もの戦死者を出している)。3度目は大恐慌から第2世界大戦。そして、今回が4度目である。
今はトランプ劣勢だが、本当の勝負はこれから
前回も紹介したが、この理論を考えたニール・ハウ氏自身は、この4thターニングの後、「アメリカは再び栄光の時代を迎える」と予想している。だが、個人的には明るい未来のイメージは全くない。すくなくとも建国の父が残したアメリカ、日本が戦争で負けたアメリカは確実に終わっていくだろう。それが本当に明るい未来なのだろうか。
結論は次の世代が決めるとして、だからこそ、過去の「4thターニング」で迎えた大統領選挙は、その後の50年を決めてきたという前例は重大だ。筆者の目から見て、皮肉なのは、この事実に先に覚悟を決めたのは、この理論の信奉者であるスティーブ・バノンが支えるトランプ大統領ではなく、むしろ、この理論を否定していた民主党とリベラルメディアの方だったことだ。その準備の違いがここまでの選挙戦の様相である。
その点で、コロナ禍はパンデミックだったのか、それとも俗に言われる「プランデミック」(陰謀論説を主張した動画)だったのか。筆者のイメージは後者である。ただそれは誰かがコロナウイルスを意図的に撒いたという陰謀論ではなく、コロナ禍で起きる社会現象で、誰がエッジを持つか。この4年間、打倒トランプを準備してきたリベラル勢力と民主党に、トランプ政権はここまでのところ、完全に敗北している。
ただし本当の勝負はこれからだ。
前回、クリントン政権からオバマ政権までのプルトクラシー政策(支配層が民のお金を横領して富を増やすこと)が、格差をさらに大きくした原因をつくり、若者を今の状況に追い込んだことを指摘した。
そして、反トランプのリベラル勢力は、それをひた隠し、偶然にもフロイド氏が残虐な殺され方をして若者の怒りに火が付いたことをチャンスと捉え、一気に若者の不満をトランプ政権の数々の愚行に向けさせ、責任転嫁をしようとしているとした。その一方で、トランプ政権の再選はずっと赤信号だったが、フロイド事件の結果、逆に、信号は黄色に戻ったとした。
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