トランプ再選可能性は「黄信号」へ改善している 失言続きで世論調査も劣勢なのに本当なのか

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では、ここから先、アメリカはどうなってしまうのか。政治では、ドナルド・トランプ大統領支持者と反トランプであるリベラル勢力の分断を最も代弁しているのは、マスクだ。マスクはコミュニティ重視か、自分の人権重視かの物差しになっている。

今がアメリカの建国時と極めてよく似ているワケ

言い換えると、トランプ大統領支持者は、警察や軍隊の統制力(オーダー)を重視するが、コミュニティーを重視せず、マスクをしない個人の権利を主張する。一方積極的にマスクをする都会のリベラル系と若者は、コミュニティー重視を主張するが、権力やオーダーを重視しない(警察の解体要求等)。筆者にはどちらもワーク(機能)しないように思える。ただこの対立は、国家としてのアメリカが生まれた直後の脆弱さを彷彿させる。

まず、建国の父が目指したのは、民主主義ではなく共和制(君主を持たない政治体制)だ。独立宣言には民主主義(デモクラシー)という言葉は、一切出てこない。

ただ共和制の試みは、古代ローマ以降幾度か試されたが、結局は新しいキングが現れるか、それまでの王政が復古するか、あるいは他国によって滅ぼされるかのいずれかで挫折している。結局、古代ローマ以降、それに匹敵する共和制を建国から維持できたのは、今のアメリカだけだ。

ただ、そのアメリカの誕生における最大の試練は、独立戦争(1775~1783)そのものではない。それよりも、英国の敗北が決まった1781年のヨークタウンの戦いから、憲法が制定され、ジョージ・ワシントンが大統領に就任する年(1789年)までの「空白」の8年だったことは、複数の歴史家が指摘している。そしてこの期間が、まさに今のアメリカと同じような状態だった。

この時の建国の父たちの動向を振り返ると、独立戦争の英雄のジョージ・ワシントンは、役目が終わると故郷に引っ込んでしまった。また独立宣言に至るまでのリーダー達、ジョン・ハンコックやサミュエル・アダムスはボストンに戻り、ジョン・アダムスやトマス・ジェファーソンは、交渉相手だった英仏に滞在していた。彼らが不在の中、戦争には勝ったが、生まれたばかりのアメリカをどんな国にするのか。目標を達成した13州は、収拾がつかなくなってしまった。

多くの共和制の試みは、このタイミングで挫折している。フランスも英国も国王を殺して革命を起こしたが、結局は混乱の後で王制に戻した。そしてこの時のアメリカも、個人の権利を主張する年長の自由主義者(パトリック・ヘンリーなど)と、アメリカを強い国家にするには、各州が結びついた連邦国家が必要という若い世代(アレキサンダー・ハミルトンや、ジェームズ・マディソンなど)が分裂した。

そしてこの対立が5年以上長引き、国民の中には、英国のジョージ3世にもう一度統治を戻した方がいいという機運さえ生まれたという。だが、建国の父は諦めなかった。最後は憲法に、人権についての修正条項を入れることで妥協点を見つけた(権利章典の修正条項)。そして、いつ分裂してもおかしくない「よちよち国家」の要として、初代大統領にはジョージ・ワシントンが選ばれた。

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