遺言書保管制度が「普通の家庭」にも役立つ理由 未成年の子がいる親は作っておくのがベター

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しかし、遺産分割協議書を作りたくても、未成年者の博文さんは単独でどのような遺産分割をするかを決定できません。通常であれば、未成年者である博文さんの代わりに親が親権者として意思表示をするのですが、今回のケースではそれも許されません。

夫の豊さんの遺産を妻の真美さんと子の博文さんが分け合う場面なので、妻と子どもの利益が相反してしまう(妻が多くもらおうとすると、妻自身が代理人を務めようとする子どもの取り分が減ってしまう)のです。

このような場合には、子どもに代わって遺産分割の意思表示をしてもらう代理人を選んでもらうために、家庭裁判所に特別代理人選任の申し立てという手続ききをとらなければなりません。そのためには書類を集めて提出する手間がかかるだけでなく、通常は遺産の額に応じて数万円から数十万円の報酬を特別代理人に払う必要があります。

もし未成年の子どもが2人いたら特別代理人も2人、未成年の子どもが3人いれば特別代理人も3人選んでもらう必要がありますので、それだけ思わぬ出費もかさんでしまうことになるのです。

一方、もし夫の豊さんが生前に

「すべての財産は妻の真美さんに相続させる」

という遺言書を作っていたら。

何とこれだけで、相続人には遺産分割協議書を作る必要がなくなり、子どものために特別代理人を選んでもらう必要もなくなるので、たくさんの手間が省けるだけでなく、多くの費用をかけずに済むことになるのです。

自分の突然の死で家族を困らせないために、万が一のために遺言書を作っておくことが家族を守ることになります。

自筆証書遺言と公正証書遺言

遺言書には大きく「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」という2つの方式があります(正確には「秘密証書遺言」という方式もありますが、あまり利用されていませんので、ここでは触れません)。

自筆証書遺言は、遺言者が手書きで遺言を作成する方式であるのに対し、公正証書遺言は、遺言者が公証役場で公証人に遺言書を作成してもらい、遺言者と証人2名が署名捺印をすることで作成される遺言書です。

次ページ単純な内容の自筆証書遺言なら無効となる心配もない
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