アメリカがコロナでボロボロでも沈まないワケ

独立記念日どころじゃないのになぜなのか?

ドナルド・トランプ大統領はすかさず”4.8 Million Jobs Added to the U.S. Economy”(アメリカ経済に480万の雇用増)とツイートした。おいおい、その前に2000万人の失業があったはずだろう。6月分だけでは4月分の4分の1しか取り返していないのに、ここで喜んでどうするんだ、と突っ込みたくなるところである。

6月雇用統計は実質「6月前半の良い時期」のもの

失業率をみると、今年2月までは3.5%とほとんど完全雇用の状態であった。6月分ではそれが11.1%である。大統領選挙の年に、失業率が2桁台で再選された例など皆無ではあるまいか。「早く経済活動を再開して、11月3日の投票日前に景気を良くしないと!」とトランプさんが焦る気持ちはよくわかる。

しかし、今回の数値は「ぬか喜び」かもしれない。雇用統計は全数調査ではなくてサンプル調査だ。主に前月上旬のデータを集計するので、今回の数値は6月前半に経済活動が再開された直後の良い時期を捉えている。6月後半に、南部諸州を中心に感染者が急増した時期を反映していない恐れがある。

もうひとつ、失業手当の問題がある。アメリカの失業手当は普通なら週500ドル程度。ところが3月に連邦議会が2兆ドルの緊急対策を決めた結果、毎週600ドルのプレミアムが支払われることになった。「毎週1100ドルももらえるならそれでオッケー」と、それで新規失業申請件数が上振れした。ところがこの上乗せ分は7月末には失効する。議会内には「追加対策を打って手当ても延長」との声もあるのだが、実際問題としてはビミョーである。

振れ幅の大きなアメリカの雇用統計を見ていると、つくづく彼我の差は大きい。日本では雇用調整助成金なるものが存在し、「社員をクビにしないで我慢している会社」におカネをあげる仕組みがある。もっとも企業はそのことを自分で立証せねばならず、その作業もお役所仕事なので、「使い勝手が悪い」と評判はよろしくない。その点、アメリカでは「今の会社なんかとっとと辞めて、次を探してください」と個人を救済する。わかりやすくはあるのだが、それから先は自己責任の世界である。

日本の雇用情勢はと言えば、直近の5月失業率は2.9%であった。おっ、まだまだ我慢しているな、と思ったら、雇用者数は1月の6043万人から5月には5922万人へと120万人も減っていた。雇用のデータを見るときは、率ではなく実数を見た方がいい。

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