「イージス・アショア」配備計画撤退の裏事情

陸自の当事者意識欠如と「パンフ購入」の弊害

ルーマニアのデベセル空軍基地に配備されているイージス・アショア(写真:ロイター/INQUAM PHOTOS)
2017年に導入が決定され、秋田市と山口県萩市の陸上自衛隊(陸自)演習場に配備される予定だった陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の計画を、河野太郎防衛相が撤回した。
北朝鮮から発射される弾道ミサイルを防御するBMD(弾道ミサイル防衛)システムの一翼をなす計画だったが、配備にかかる予算が当初の見積もりよりも膨大な金額になることが予想されると河野氏が判断、撤回へ至った。イージス・アショア計画の撤回で、日本のミサイル防衛態勢はどうなるのか。海上自衛隊(海自)元海将で金沢工業大学大学院の伊藤俊幸教授に、今回の配備計画撤回や自衛隊装備の調達の問題点について聞いた。

――2017年に北朝鮮が相次いで弾道ミサイルを発射したことを背景に、イージス・アショアの配備計画が決定されました。今回、イージス・アショアの配備が白紙に戻されましたが、撤回されるに至った過程をどう見ていますか。

イージス・アショアを運用するのは陸自だが、陸自と装備品を管轄する防衛省内局の対応がひどかった。配備予定地との交渉、地元との交渉そして構成品選定など、一つ一つ丁寧にやるべきだったのに、それができなかったのではないか。そもそもイージス・アショアを運用すべき陸自に、当事者意識があったのかどうかも疑問だ。

陸自に当事者意識があったのか

――内局や陸自の当事者意識のなさとは、具体的にどういった点ですか。

2カ所のイージス・アショアは陸自の基地で運用されるにもかかわらず、地元での説明会では内局の背広組に任せっきりで、陸上自衛官が積極的にかかわった様子が見られなかった。

例えば、秋田市の新屋演習場に設置を決める前に青森、秋田、山形3県の国有地19カ所を調べたが、そのうち9地点について周囲の山がレーダーの障害になるという理由で「不適格」だと秋田県および秋田市に説明していた。ところが、これらは実地調査をしておらず、デジタル地球儀「グーグルアース」の使用で済ませていた。しかも計測が誤っていたため、住民から大反発を受けたことはご承知の通りだ。

陸自は地理情報隊や施設部隊を持っている。なぜ自ら測量部隊を出さなかったのか。実際の運用は陸自がやるのに当事者意識の欠如を疑わざるを得ない。

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