欧州は難題山積なのにユーロ相場は堅調なワケ 「ドルの先高観」の消失が相場を決めていく

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また、「ユーロ圏経済が日米欧3極の中で最も出遅れている」というファンダメンタルズへの懸念は、同時に「アメリカ経済は復調し、いずれ利上げ路線に戻る」という期待も帯びていたように思える。それは言い換えれば、「ドルの先高観」に賭ける考え方だった。

しかし、既報のとおり、FRB(米連邦準備制度理事会)は当面の低成長を前提に政策金利の軌道に関し「2022年末までゼロ%」で意見集約している。その上でイールドカーブコントロール(YCC)導入の思惑まで浮上しており、「アメリカの金利上昇にけん引される格好で欧米金利差が拡大することはない」というのが既定路線になりつつある。こうした中、「ドルの先高観」に賭け、対ドルでユーロを売ることの勝算は後退しているとの見方もできよう。

ユーロは1.10~1.15ドルのレンジ

2つの理由、どちらの立場を取るにせよ、ユーロ圏を主語とする積極的な買い材料ではなく、いわば「敵失のユーロ高」でしかないという話である。敵失以外の理由を見出すならば、復興基金やECBの果敢な政策対応への期待がユーロの見直し買いにつながっているという見方もありうるが、これが決定的な要因との印象はない。

それゆえに、今後、積み上がったユーロ買いが巻き戻される過程で下値を探る展開は懸念として残る。とはいえ、アメリカ金利の低位安定とともに「ドルの先高観」が消失しているという論点は当面続くというのが筆者の基本認識だ。

まとめると、政策金利のマイナス幅が大きいユーロが上昇し続けるのは難しいと思われるが、対ドルでの下落余地も限定されていると考えたい。欧州圏の状況から抱くイメージとは裏腹にユーロドルは「1.10~1.15」を主戦場に「意外と堅調」という時間帯が年明けまで続くと予想する。

※本記事は個人的見解であり、筆者の所属組織とは無関係です

唐鎌 大輔 みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト

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からかま・だいすけ / Daisuke Karakama

2004年慶応義塾大学経済学部卒。JETRO、日本経済研究センター、欧州委員会経済金融総局(ベルギー)を経て2008年よりみずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)。著書に『弱い円の正体 仮面の黒字国・日本』(日経BP社、2024年7月)、『「強い円」はどこへ行ったのか』(日経BP社、2022年9月)、『アフター・メルケル 「最強」の次にあるもの』(日経BP社、2021年12月)、『ECB 欧州中央銀行: 組織、戦略から銀行監督まで』(東洋経済新報社、2017年11月)、『欧州リスク: 日本化・円化・日銀化』(東洋経済新報社、2014年7月)、など。TV出演:テレビ東京『モーニングサテライト』など。note「唐鎌Labo」にて今、最も重要と考えるテーマを情報発信中。

※東洋経済オンラインのコラムはあくまでも筆者の見解であり、所属組織とは無関係です。

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