欧州は難題山積なのにユーロ相場は堅調なワケ 「ドルの先高観」の消失が相場を決めていく

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まず1つ目については、2019年半ば以降はアメリカとドイツの金利差が顕著に縮小、つまり、アメリカの金利が相対的に低下してくる一方、ドル高ユーロ安の傾向が続いてきた。具体的には、昨年6月に米独10年金利差は平均して2.3%ポイントあった。それが今年6月には1.1%ポイントまで縮小しており、1年で1.0%ポイント以上も縮んだ。

だが、その過程でユーロドル相場は1ユーロ=1.07付近まで下落した後、1年前の水準に近い1.13付近に戻ってきただけだった。過去1年で見れば、アメリカ金利の相対的な落ち込みが顕著になる一方で、対ドルでのユーロ相場はむしろ現水準でもまだ軟調という印象なのである。そう考えると、ここからさらにユーロが対ドルで続伸する可能性もある。

「ユーロ圏出遅れ」から「新型コロナで総不況」へ

なお、上述したような欧米金利動向にもかかわらず、ユーロがドルに比べて忌避されていた背景としては「ユーロ圏経済が日米欧3極の中で最も出遅れている」というファンダメンタルズへの懸念が再三指摘されていたためであろう。それゆえにECBの追加緩和観測もつねにくずぶっており「ユーロは買いにくい」との解説が行われてきた。また、「そもそも政策金利がマイナス0.50%の通貨など保有できない」という根本的な指摘もあった。

これらの解説は一理あるが完全には納得しがたい部分もあった。現状はコロナショックを受けて世界経済が総不況に陥る中、「ファンダメンタルズへの懸念」がユーロを避ける理由として目立たなくなり、もともとあった欧米金利差縮小もあいまってユーロに見直し買いが入っているということなのかもしれない。

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