LCCピーチ「国内全路線」で運航再開した腹の内 森CEOが語るコロナ禍の苦悩、運航規模の拡大

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6月以降も運航変動費を賄えないレベルの需要であれば、さすがに全路線での運航再開は厳しいと考えていた。ただ、5月に緊急事態宣言が解除され、感染の様子がかなり落ち着いてきたことで、6月19日から(赤字幅の縮小に向けて)収入を確保するという姿勢へギアを入れ替え、運航規模を拡大することにした。

――具体的にどの程度の搭乗率で運航変動費を賄えるのでしょうか。

50%を超えてくると、運航変動費は十分カバーできる。6月19日の全路線の平均搭乗率は50%を超えている。利益を出すためには70%以上の搭乗率が求められるが、飛んでも赤字が拡大しないのであれば、まずは飛ぶことから需要を回復させたい。

森健明(もり・たけあき)/1962年生まれ。1987年、全日本空輸に入社。航空機のオペレーション業務を担当した後、2011年にLCC共同事業準備室の主席部員としてピーチの創業準備に携わり、同年にピーチの準備会社へ移籍。オペレーション・総合企画統括、COOを経て、2020年4月から現職(記者撮影)

旅行客の懸念は、自分が移動することによってコロナを運んでしまうリスクと、目的地での感染リスクだ。さらに、こうした懸念から、訪問先が温かく迎えてくれないのではと心配している。これらの懸念が払拭されないことには、人は動かない。ただ、実際に人が動いてみないと、その流れはできない。

国が「6月19日からほかの都道府県に移動していいよ」と言っているのであれば、とりあえず全路線で運航し、人を動かすことで需要回復につなげていく。こうしてお客さんが増えてくれば、(収入規模が)どんどん利益を出せるレベルに近づくため、6月19日からは重要な局面を迎えている。

ANAのサポートがなかったら厳しかった

――改めて、ここ数カ月でコロナの第1波が業界に与えた影響を振り返ってください。

最初に影響が出たのは、フルサービスキャリアのビジネス旅客だ。2月~3月にかけて、感染地域を中心に海外渡航需要の減退が顕著になり、とくに中国は一気に下がった。われわれは中国に向けて上海路線しか運航していないが、3月から感染地域が広がるにつれて、国際線で本格的に予約取り消しが増えていった。3月は(キャンセルによる)払戻金がそうとう多かった。

――キャッシュが尽きかけた瞬間もあったのでしょうか。

コロナ後の「新常態」とどのように向き合っていくべきなのか。「週刊東洋経済プラス」では、経営者やスペシャリストのインタビューを連載中です。(画像をクリックすると一覧ページにジャンプします)

結果的に回避できたが、それはあらかじめANAと資金援助の計画を立てて、資金が尽きないようにコントロールしたから尽きなかっただけだ。何もしなかったら、当然資金は尽きていた。

LCCはどこも手元に流動性資金は保有しないため、ピーチもそれほど内部にキャッシュは留保していない。唯一、払い戻しのためのリザーブはしていたが、その規模が尋常ではなかったので、その部分の一時的な手当てはANAグループのサポートがないと厳しかったかもしれない。

「週刊東洋経済プラス」のインタビュー拡大版では「国内線全便復活への思い」「大手LCCとどう戦っていくか」についても詳細に語っている。
森田 宗一郎 東洋経済 記者

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もりた そういちろう / Soichiro Morita

2018年4月、東洋経済新報社入社。ITや広告・マーケティング、アニメ・出版業界を担当。過去の担当特集は「サイバーエージェント ポスト藤田時代の茨道」「マイクロソフト AI革命の深層」「CCC 平成のエンタメ王が陥った窮地」「アニメ 熱狂のカラクリ」「氾濫するPR」など。

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