社会保険を無視する人を待ち受けるひどい格差

コロナ禍を生きるには税や保障の知識が必要

例えば、雇用調整助成金は「雇用保険」からの給付です。会社は、人を雇えば、事業規模を問わず雇用保険に加入しなければならないのですから、すべての「雇われている方」は働き方の要件を満たせば雇用保険被保険者であるはずです。筆者はオンラインセミナーなどでこの制度について説明することがありますが、その際、必ずといっていいほど「雇用保険に加入していなかったのですが、何か助成が受けられる方法はないでしょうか」といった質問が出ます。

事業主に聞くと、「小さな事業所なので雇用保険には入らなくてもよいと思っていた」とか「何となく手続きを先送りにしてきた」などという言葉が出てきて信じられない気持ちになりますが、一方で雇われているほうも「雇用保険に入っていないことに疑問を抱かなかった」とか「社会保険の知識がなく、むしろ社会保険料を支払わなくてラッキー」などという方がいるのです。

さすがに健康保険に入っていない方は少ないと思いますが、会社員の健康保険(健保)と自営業などの国民健康保険(国保)では給付に違いがあることさえ知らないという方もいます。そうした方は、筆者が「コロナ対策の特例として国民健康保険でも傷病手当金が受けられるようになりました」と伝えても、まったくピンとこないという顔をします。

「健保」と「国保」の間に横たわる格差

国民健康保険に加入する方は案外多く、「健康保険組合連合会」のウェブサイトを見ると、会社員が加入する健保組合の加入者が約2900万人、協会けんぽが約3850万人、公務員が加入する各種共済組合が約900万人、国民健康保険が約3500万人という分布になっています。

それぞれの医療保険制度は保険料の負担の方法や財政状況なども異なるので、単純比較はできませんが、仮に協会けんぽを中小企業に勤める方が加入する医療保険、国民健康保険はさらに小さい事業所に勤める方が加入する医療保険と定義すると、どちらも「雇われている人」の保険なのに、勤め先の規模によって状態がまったく異なることが明白になります。一方は健康保険に加入して保険料の負担は事業主と折半、他方は国民健康保険なので事業主負担の仕組みがありません。

また健康保険には傷病手当金がありますが、国民健康保険には今回のコロナ特例を除けば傷病手当はありません。また健康保険被保険者は出産手当金が受けられますが、国民健康保険にはそのような手当はありません。小さな事業所に勤めていても要件を満たしていれば雇用保険に加入できますが、雇用主の事情で雇用保険に加入できていなければ、万が一失業しても失業手当はありませんし、育児休業給付や介護休業給付もありません。

こうした社会保障の格差を、「たまたま勤め先が違ったから」という理由で受け入れてよいのでしょうか? 「社会保険料の負担がない」のは本当にラッキーなのでしょうか? 不本意ながら正社員になれずにいる方が社会保険に入れないというのは、「仕方がない」ことなのでしょうか。

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