無能な社長を増やす「給料安すぎ日本」の大問題 「モノプソニー」をなくして経営者を鍛えよ
小規模事業者が増加すると、もう1つ大きな問題が生じます。それは、経営者の質が低下することです。
経済学では、同じ国の同じ業種の中に、大企業、中堅企業、小規模事業者とさまざまな規模の企業が存在するのは、経営者の質に要因があるとされています。各企業の規模は、経営者の能力の反映だとされているのです。従業員数300人の企業の従業員数がなぜ300人なのか、その理由は、この会社の経営者が300人の従業員を抱える能力を持っているからだということです。
日本ではこういうことをハッキリ言うと嫌われてしまうかもしれませんが、小規模事業者の経営者の能力は、極一部の成長が著しい事業者以外、雇える従業員の少なさが示すとおり、とても低いのです。
「小さい会社は経営レベルが低い」は世界の常識
日本の文化ではありえないかもしれませんが、海外の論文では当たり前のように、「小規模事業者は経営のレベルが低い」と書かれています。経営者の能力が低いから規模が小さく、規模が小さいから生産性が低いという関連性があるのです。
実際、「Measuring and explaining management practices across firms and countries」の分析によると、経営の質と生産性の間には、0.81という非常に強い相関係数が認められます。また、強い因果関係があることも検証されています。
小規模事業者の経営のレベルが低い理由の1つは、企業が小さくなるほど、家族経営になる確率が高くなるからだとされています。
家族経営では、経営能力が高い最も適切な人ではなく、経営者の子ども、特に長子が会社を継ぐことが多くなります。選べる人材の幅が限られますので、どうしても経営者の質が下がってしまうのです。事実、家族所有・家族経営・長子による事業継承は、非常に質の低い経営を招く要因であると統計的に分析されています。
面白いことに、生産性が相対的に高いアメリカとドイツでは、社長が長子である割合が3%なのに対し、生産性が相対的に低いフランスとイギリスでは、その割合が14~15%と高いのです。それを反映して、経営の質の評価も低くなっています。
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