「日本へのメッセージ--グーグル、若者、メディア、ベンチャー精神について」梅田望夫(前編)

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メディアはどうすれば生き残れるか?

--メディアも、紙からネットにシフトして、『ビジネスウィーク』とか『フォーチュン』などのビジネス誌は、タダでコンテンツの大半をネットに出しているわけですけれども、今後メディアがネットにシフトすることで、リアルを補うような収益を上げることができるのでしょうか。

それはない。最後までない。

--とすると、情報がネット空間に溢れ、コモディティ化してしまい、リアルのほうのマーケットも収縮してしまうという道しかないんでしょうか。

収縮の度合いの問題だと思うんですよね。ただね、アマゾンが出てきて、書籍の全体の売り上げはどんどんアメリカで上がっている。だってさ、1年に1冊も読まなかった人が5冊読むようになればさ、本はもっと売れるわけでしょ。つまり、雑誌だって、もっと面白いものをつくればもっと売れる。収縮って決めることはない。

たとえば、「新聞はこれからダメになっていくんですか」で聞かれるからさ、「今までと同じ経営と紙面の作り方をしていればそうだろうけど、もう少し斬新なことを考えれば、違うんじゃないの」と。たとえば、「今の新聞って何ですか」って言ったときに、ほとんど全部の記事は雇用されている記者が書いたものじゃない。そこが問題なんだよね。つまり、朝日新聞なら朝日新聞で、あの記事というのは多様性がまったくないわけですよ。一つの朝日新聞っていう組織に運命を握られちゃった人たちが書いているんだもん。全員が同じ教育を受けて書いているんだもん。だからさ、それをカンファタブルに思う人は買い続けるかもしれないけど、面白くないと一旦思ったら、翌日面白くなったりはしないじゃない。

新聞はもっと自由なもの

ブログが出てきて、よく議論になるのは、「これだけブログがあって新聞はダメですか」と。ところが、ブログの面白いものをさリアルタイムで拾ってきて、それが翌日にきちんと一番面白いところを印刷して、朝日新聞の真ん中6面ぐらいは、日本のブログの中の一番面白いものがちゃんとピックアップされて、多様な議論がちゃんと載っていると。たとえば、村上ファンドの記事を昨日から一生懸命読んでるんだけど、ブログのほうが面白いよ。多様性がある。メディアは第4の権力ではあるんだけど、権力のチェック機構には全然なってないじゃない。全然なってないよ。だけど、ブログのほうがもっと多様で、今の常識の新聞では書けないだろうなということが、それぞれプロフェッショナルの観点で書いてあるよね。

新聞ってもっと自由なものでしょ、本当は。一つの統制された意見として書くというのが新聞の約束事だけど、もっと世の中は多様であるわけでしょ。あれだけの組織力を使えば、リアルタイムで、どんなに面白いものが書かれているかってわかるよね。その人たちと交渉して、転載の許可を数時間でとるみたいな組織をつくって、新聞の中6面ぐらいを、日本中で起こっているブログ、場合によっては、グローバルに起こっている事件に対するグローバルなリアクションのブログをちゃんと翻訳して、載っけていく体制をつくったら、売れるかもしれないよ。たとえば、そういうこと一切考えない。それで、新しく生まれてくるものは自分たちを脅かすからダメと。再販制度の批判というのは、一切載らないとかさ。(売上高が)減るとすれば、そういう経営のあり方とか、そういう風につくられた製造物である新聞に対して、みんながノーと言っているということでしょ。だから、そういう問題を一個ずつ議論しないと、ネットがとか、Web2.0が、新聞にどうかとか雑誌にどうかということにはならないでしょ。
(後編に続く)

聞き手:佐々木紀彦、高木あやか(フリージャーナリスト) 撮影:Jochen Siegle

梅田望夫(うめだ・もちお)
1960年生まれ。慶應義塾大学工学部卒。東京大学大学院情報科学科修士課程修了。94年よりシリコンバレー在住。97年にコンサルティング会社、ミューズ・アソシエイツをシリコンバレーで創業。2005年より、はてなの取締役も務める。

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