コロナ「危険手当なし」医療従事者が抱える不安 イギリスの医療用防護服はノースリエプロン

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イギリスのNHS職員の防護服は、半袖の制服にノースリーブのエプロンだ(写真:REUTERS/Hannah McKay)

イギリスは5月下旬の時点で3万8000人の新型コロナウイルス感染による死亡者が報告されている。これには当然、医療従事者の犠牲者の人数も含まれている。5月20日の時点で政府が把握しているだけで、介護職者も入れると300人以上のNHS職員の新型コロナ感染による死亡が確認されている。わずか2カ月未満で300人の医療従事者の死亡率はあまりにも多すぎるだろう。

この中には、引退後に政府の要請に応えて復職した人や、新型コロナ治療の前線に送り出された看護学生まで含まれており、さまざまな議論が起きた。4月から新型コロナ治療の専門病棟で働いている看護師の視点から、イギリスの医療現場が抱える不安や、それをどう乗り越えてきたかを述べたい。

半袖制服の上にノースリーブのエプロン

世界各国のコロナ医療やPCR検査の様子などを、テレビや新聞のニュース画像や映像で見たことはあるだろうか? 何カ国かの映像を同時に見れば、イギリスの医療従事者の個人防護具(PPE)の異様な映像に驚くだろう。イギリスの医療従事者が新型コロナ感染患者に直接ケアに当たるときのPPEは以下のとおりだ。

半袖制服の上に、ノースリーブのペラペラの使い捨てエプロンと手首丈の手袋。サージカルマスク(通常のマスク)にフェイスシールド。つまりひじ下は手首まで素肌が露出する。

この姿で私も新型コロナ感染症病棟で患者看護師に当たっている。薬を出して点滴の接続、注射、移動介助など患者に直接触れる行為もいくつもある。上級医であってもこのPPEでコロナ患者に聴診器を当てる。看護助手はこのPPEでトイレ介助、清潔介助、食事介助までを行う。

病棟内の患者がマスクをすることはないので、感染患者に至近距離から素肌の腕に咳をされることなど日常茶飯事だ。

またPCR検査所でも世界のほとんどが防護用マスクに長袖ガウンを着用しているが、イギリスの場合は、私たちコロナ病棟勤務者と同じPPEだ。ドライブスルー式の検査所ではイギリス軍が主に検査を仕切っているが、軍隊もまったく同じ半袖制服にひじ下を露出させている。

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