コロナ「危険手当なし」医療従事者が抱える不安

イギリスの医療用防護服はノースリエプロン

とくに収入の高さゆえに多額の年金を天引きされる事に辟易した医師など、高所得のNHS職員に多い。これらの職員の家族にとっては受け取れるお金は政府からの見舞金だけになってしまうリスクがある。

医療従事者が置かれる環境は非常に厳しい一方、地域に根付いた医療従事者向けのボランティアやサポート、応援は心の支えとなっている。

スーパーや飲食店によるサービス

例えば、イギリスの多くのスーパーは毎朝、開店時間の30分から1時間前にNHSの職員IDカードを持っている人の入店を認めている。これはロックダウン初期に人々のパニック買いが社会問題となっていた頃、ICUに勤務するあるNHS看護師が、「長時間勤務を終えてスーパーに買い物に行ったら棚が文字どおり空っぽだった」と、SNSで涙の訴えをしたことがきっかけとなった。

筆者自身も経験したことがあるが、ロックダウン中普通の人は好きな時間に好きなだけ買い物ができるが、危険な仕事に従事している人々はパン1つ思うように買うことができないのである。

スーパーによっては、NHSの職員であれば10%割り引きしてくれる店もある。日常品を買う店でこのサービスは庶民のNHS職員には大変ありがたい。割り引き以上にうれしいのが、NHSのIDカードを出すときに言われる「いつもありがとう!」との言葉だ。

飲食店によるサービスもある。ロックダウンで経営が厳しいにもかかわらず、病院には近辺の店から、ピザ、カレー、総菜と毎日のように差し入れがくる。新型コロナの治療に専念する専門病棟で勤務を始めた最初の頃は弁当を持参していたが、ここ1カ月以上は差し入れの食事をありがたくいただいている。時にはケーキやフルーツといった差し入れも。

また、院内のカフェは職員に無料でコーヒーを提供してくれるし、地域のボランティアが院内に大型テントを立て、時にパンやビスケット、ケーキなどを配布してくれることもある。今では、NHSの職員に対してサービスを行っている店のまとめサイトを作っている人もいる。

こうしたサポートは国や公的なものとは関係なく、あくまで店や地域の善意で行われている。院内のカフェも民間企業が運営しており、無料コーヒーは彼らの善意で成り立っている。だからこそ温かく感じるのだ。

地域の人からもつねに「ありがとう」という言葉をかけられる。彼らのこうした小さな支援や気持ちほど、私たち医療従事者の気持ちを和ませるものはない。新型コロナの爆発感染で逃げ場のない私たち前線職員を支えてくれているのは、多くの人々のこうした温かい気持ちなのである。

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