日本医師会長選挙「仁義なき権力闘争」の大混迷

こんなときに、現職が「辞める」を2度翻意

日本医師会の横倉義武会長と中川俊男副会長(撮影:岡田 広行)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大において、医療崩壊を防ぐ司令塔として注目される日本医師会で、いま内部抗争が勃発している。6月27日に開かれる会長選挙をめぐってだ。

今回は4期8年にわたって会長職を守ってきた横倉義武氏に、副会長歴5期10年の中川俊男氏が挑む構図だ。だがその横倉氏、今年に入って2度も「不出馬」を周辺に伝えながら翻意したことが、お家芸ともいえる権力闘争をエスカレートさせている。その経過をたどると、遺恨の連鎖で内部対立を続ける日本医師会の病理が見えてくる。

「会長交代にあまりにも批判が強い」

5月31日午後7時20分、筆者のショートメールにメッセージが届いた。日本医師会の横倉会長からだ。

「会長交代にあまりにも批判が強いので再考します」

事務的な短い文面ながらも、律義で気遣いに長けた横倉氏らしい“連絡”には、苦悩がにじみ出ていた。

横倉氏は福岡県医師会長を経て、日本医師会会長に就いた。昨年8月末に、支持基盤である地元の九州医師会連合会から強く推されて5期目の出馬を事実上、表明している。だが、今年3月に入って新型コロナウイルス感染が広がり、忙殺されることになる。と同時に、水面下で会長選への立候補を模索していた中川氏との内部抗争は「避けるべきだ」と同月23日、中川氏を呼んで、こう伝えたという。

「国難の時期だから争う姿を国民に見せたらあかん。あとは任せるつもりだ」

その翌日には、同じ副会長の今村聡氏や周辺の関係者にも伝えた。事実上の“禅譲”ということになる。ただ、「他言しないように」と口止めをすることも忘れなかった。4期8年の長期政権が終わるとなると影響が大きいと考えたからだろう。このときから横倉氏は「会長選を控えて2人が争っていると思われないように」と、政府との交渉ごとに中川氏を連れて歩くことが多くなった。

だが、横倉氏の心は揺れていた。

4月22日に、筆者が1時間にわたってインタビューをしたときに、その迷いの一端を垣間見せた。

「政治家や役人の間での中川の評判が、よろしくないんだよね」

中川氏は北海道医師会出身で、医師会内では政策通として一目置かれるエース的存在だ。中央社会保険医療協議会(中医協)の医師会代表の委員を務め、舌鋒鋭く医師会の主張を展開する。よくいえば政治と是々非々で対峙する気構えができているが、この押しの強さが厚生労働省の役人や政治家から反発を受けているというのだ。

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