「仕事がうまくいかない」とボンヤリと悩む人へ 因数分解して思考を整理してみるのが先決だ
もう少し丁寧に順番を追っていこう。仕事という言葉の中にあるのは次の要素だ。
着替え・出勤の移動・出社・同僚との人間関係・あいさつなど・実際の仕事となっている各種のプロジェクト・後輩社員の教育・書類の内容チェック・アイデア出し・打ち合わせ・上長への報告・給与の振込み・人事の評価……などなど、全部はとてもあげられないし、個人個人の仕事や人生のタイミングによっても異なるが、一概に「仕事」といってもその言葉の中には無数の要素が含まれている。
同じことが「うまくいかない」という言葉にも言える。モチベーションが湧かない・失敗が続いている・評価されていない・嫌われている・組織風土が合わない・事業に興味を持てない・努力の方向が見えない・仕事が難しすぎる……などなど、これはこれでやはり無数の要素があるのだ。
具体的に掘り下げていく方法
この「仕事がうまくいかない」という悩みを因数分解する流れをシミュレーションしてみよう。これも慣れれば当然1人で脳内で秒速でできるようになる。
だが、最初は誰か、質問をしてくれる人にお願いし、実際に何度か質問を繰り返しながら具体的にしていくのがいいだろう。質問するごとに、言葉の具体性のレイヤーを上げていくイメージが持てるとわかりやすい。
・第1レイヤー
「ここで言う仕事ってなんだろう」→「顧客とのミーティング」
「うまくいかないってどういうことだろう」→「会話がうまく成立していない」
「顧客って誰だろう」→担当しているクライアント、中でも責任者や経営者など上位層の人に苦手意識がある。
「会話がうまく成立していないってどういうことだろう」→営業のトークスクリプトは頭にたたき込んでいるが、どうしてもクライアントとの気軽な世間話ができなくて、精神的な距離が開いてしまう。
「経営者などクライアント上層部に苦手意識があるのはなぜだろう」→上位層が求める世間話に対応できていない。
「気軽な世間話ができないのはなんでだろう」→文化的、教養的な欠如を感じている。またそれによって顧客に教養のなさがバレるのが恥ずかしい気持ちになる。
ここまで掘り下げてみる。そうすると、「仕事がうまくいかない」という悩みが単なる悩みではなくなる。この状況を言葉の因数分解によって正確に表現すると、「仕事でクライアントの経営層と会話するときに、教養がないことがバレるのが恥ずかしくて、思ったように会話ができない。この状況に自信を失い、ストレスを感じている」ということがようやく明確になるわけだ。
ちなみに、「うまくいかない」の内容が1つだけではないこともある。課題が複数あった場合でも因数分解の過程は同じだ。何度でも繰り返せばいい。こうやって段取りにしたがって思考を言語化していく作業は、実際にトライしてみるとそんなに難しいことでもない。
時間はかかるかもしれないが、言葉という補助線を使って、自分の意識という暗い谷底に降りて、問題という鉱石を見つけるような作業のイメージだ。
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