「仕事がうまくいかない」とボンヤリと悩む人へ 因数分解して思考を整理してみるのが先決だ
こうやって思考を言語化する作業を試みてみると改めてわかることがある。人間は意外に自分のことをわかっていないのだ。何より、人間にとって、思考というなかなかに面倒くさい作業を避けて楽をしようとする。思考の過程で、「仕事がうまくいかない」とか「よかったです」みたいな大雑把で便利な言葉を見つけてしまうと、そこで思考を止めてしまう。間違っていないからだ。
だが、正確ではない。思考は正確な言葉で表現しないと、本当はもっと深い思考にたどり着く可能性があっても、途中でその行き先を見失ってしまうのだ。
発明王エジソンは「人間は“考える”という真の労働を避けるためなら、なんでもする」という言葉を残している。「考える」しかないというのに。
「悩む」ことに意味はない
言葉を因数分解することで思考を明確にする。これがいちばん効くのは人生の進路や次の行動に漠然と「悩んでいる」ときだ。これも、思考を因数分解して言葉にすることで、問題の本質や自分が進むべき進路が見えてくる。
漠然と「悩んでいる」人も多いが、言葉を選ばずに言うと、それがいちばん無駄な行動だ。
「悩む」のは、なんとなくわからないままグズグズするということ。前に進むことも、逃げることもしないで、思考が同じ場所にとどまり続ける。水や空気と同じで、思考も変化しないで同じ場所にとどまっていると、どうしてもよどんでしまうものだ。そこを因数分解しないといけない。「悩む」という言葉を封印して、思考を因数分解し、言語化していかないと、行動に移せない。
僕はもともと大手企業の会社員から独立し、自分の会社を作ったというキャリアのため、広告・メディア業界の知人から、「会社を辞めようか悩んでいるんです」という相談を受けることが多い。
これには今のところ100%断言できる法則があるのだが、「会社を辞めようか悩んでます」と言って相談にくる人が会社を辞めることはない。悩んでいるということはモヤモヤと漠然とした思考が言語化できていないということなのだ。
思考が明確になっていないのに新しい行動をとれるわけがない。せっかく入った大手の広告会社やメディア企業を辞めるにはそれなりの思考に基づいた断固たる決意と、未来に向かう具体的な計画が必要だ。
一方で、実際に会社を辞める人は「会社を辞めるので、いろいろ教えてください」というスタンスでくる。彼らは悩んではいない。「会社を辞める・会社を辞めない」という自分の人生における、2つの選択肢をすでに比較して思考し、自分なりの仮説として「会社を辞める」ほうが人生にプラスになることが多いという結論を出したうえで、相談に来ているからだ。
思い返せば僕自身、博報堂を辞めて独立する際に、誰かに独立するかどうかを相談したことはなかった。自分なりに思考を積み重ね、会社組織にいないとできないことと、会社組織を出てはじめてできることを、それぞれ比較して、独立しようという意志を固めてから報告しようと思っていた。
会社を辞めることはもちろん、人生における転機においては、不安や焦りもあって、つい思考が浅くなり漠然と「悩む」行為にとどまってしまうことも多い。精神が不安定だと呼吸も思考も浅くなる。しかし、緊急事態ほど深く呼吸し、深く思考したほうがいいのも事実だ。
かつて博報堂の先輩に言われた言葉を覚えておいてほしい。「この世にはどうにもならないことはない。たまにどうしたらいいかわからなくなるだけだ」ってね。落ち着いて考えれば大丈夫だよ。
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