新型コロナの第2波よりも恐ろしい東京の危機 首都直下地震なら死者約2万人、被害額95兆円

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では、震災はどうか。首都東京は関東大震災以降、直下型の大地震を経験していないため、大地震で何が起きるのかを実感としてつかめている人はまれだ。首都直下地震では経験者がいない。

東日本大震災で、帰宅困難者が出た交通インフラのダウンや停電は経験していても、直下型の大地震で水はどうなるか、食料はどうなるか、電気やガスはどうなるか、そして経済はどれだけのダメージを受けるかを想像することは難しい。

想像できないことに対して、人は過剰か、過少しか反応できないものだ。それでもわれわれは地震に対しても、ウイルスに対しても、わからないなりに事前の備えをしなければならない。

「事前の備えが重要であることは、COVID-19対応と大地震への備えに共通すること」(平田教授)なのである。

備えの第1は、まず地震もウイルスもあって当たり前と考えることだ。地震は人類誕生以前から起きているし、ウイルスも、ひょっとすると人類よりも早くから地球上に生存していた可能性だってある。

われわれは、過去も未来も、新型コロナのみならず、ずっとウィズ・ウイルスであり、またウィズ地震なのである。その認識から備えは始まる。

自然に対してもっと謙虚であるべき

いままで見たことのないものが現れると、われわれはそれに新型と名付ける。しかし、それらは多くの場合、ただわれわれが知らなかっただけで、ずっと昔からそこにあったものだ。新たに発見しただけであって、新しく登場したわけではない。

実はわれわれが知っていると思っていることは、地球上でも、地球内部でもほんのわずかだ。人間が知っているのは地表上空、地下、海底10km足らず止まりで、地球の直径から見ればわずかに0.07%の範囲のことである。車で行けば10分ほどの距離である。

したがって地表上空、地下、海底についてわれわれの知っていることなど、吹けば飛ぶようなものでしかない。いわんや地球外のことは何もわかっていないと言ったほうが正確なはずである。われわれは自然に対しても、ほかの国々に対しても、もっと謙虚であるべきだ。

近年、企業はESG(環境・社会・統治)を経営の中心に置き始めている。ESGとは自然に対しても、社会に対しても「謙虚」であるということだ。

人類はこれまで自然に対して無遠慮に食いまくり、飲みまくってきた。地球上のどこへでも行って、環境を壊し、資源を使いまくった。そのため、人間社会とは無縁であった奥地に棲む細菌・ウイルスまで、自分たちのところへ呼び込んだ。

因果応報、自分たちのやったことは必ず自分たちの身に降りかかってくる。地球の環境を破壊して、その影響が地球に影響しないはずがない。その意味では地震もまた、われわれの地球に対する無遠慮な振る舞いへの報復と言えるのではないか。

巨大地震に対して、人は無知であるとともに無力でもある。あとは天に祈るしかない。

「お天道様は見てござる」

私の祖母はそう言って私のことを戒めた。

「地震カミナリ火事オヤジ」のうち唯一残った地震への恐れ。地震に対する恐れは、いま生き残っているわれわれにとっては神の啓示かもしれない。

丹羽 宇一郎 日本中国友好協会会長

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にわ ういちろう / Uichiro Niwa

1939年愛知県生まれ。名古屋大学法学部を卒業後、伊藤忠商事に入社。同社社長、会長、内閣府経済財政諮問会議議員、日本郵政取締役、国際連合世界食糧計画WFP協会会長などを歴任し、2010年に民間出身では初の中国大使に就任。現在、公益社団法人日本中国友好協会会長、一般社団法人グローバルビジネス学会名誉会長、福井県立大学客員教授、伊藤忠商事名誉理事。著書に、『丹羽宇一郎 戦争の大問題』東洋経済新報社、『人間の器』幻冬舎、『会社がなくなる!』講談社など多数。

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