自粛警察「執拗すぎる相互監視」を生む根本要因

戦中の隣組、戦前の自警団との意外な共通点

今年8月、日本は戦後75年の節目を迎える。社会の中核を担う世代は着実に交代していっているのに、住民が相互監視するような社会は繰り返されているように映る。その原因は「人間の本質にある」と言う。

「人間の中に『人の役に立ちたい』『みんなに貢献したい』という欲求はいつの時代にも存在します。それがちょっとしたきっかけで、変な方向に暴走する。人間の本質や性格は何年経っても変わりません。コミュニティーの役に立ちたいという思い、それ自体は今も昔も悪いことではないんですが……」

新型コロナウイルスに関する国や都道府県の対応は、主に「改正新型インフルエンザ等対策特別措置法」に依拠している。都道府県知事は同法24条9項に基づき、休業の協力を要請してきたが、協力に応じなかった事業者に対しては、施設使用の制限などの措置を要請できるとの規定がある。続く第4項は「特定都道府県知事は、第2項の規定による要請(中略)をしたときは、遅滞なく、その旨を公表しなければならない」としている。

この規定に基づき、東京都や大阪府などは休業要請に応じなかった施設の名称を公表した。施設名が公表されたパチンコ店の前には人々が集まっては「営業やめろ」「帰れ」などと叫び、店側やほかの客らと怒鳴り合う事態も発生した。こうした様子はテレビやYouTubeでも盛んに流されたので、目にした人も多いだろう。

施設名公表は「私刑」招きかねない

「要請」に従わない店名を行政が「公表」するという条項には、「自主」と「強制」が同居しているように映る。日本社会に根付く「同調圧力の強さ」を背景に、相互監視を推し進めた素地があるようにも見える。

「自粛は要請だったはずなのに、それに応じない店名を公表する行為には、間違いなく、同調圧力に期待しての部分があったと思います。『要請に従わない店は周辺から白い目で見られる』という雰囲気ができるのを行政はわかっていてやっている。それは、私刑(リンチ)の誘発に繋がりかねないんじゃないか。店名の公表はやはり望ましくなかったと思います。日本は近代法治国家ですから、私刑はあってはならない。私刑を誘発しかねない方法を選ぶ行政、私刑で誰かを処罰するような社会は望ましくないと思います」

住民による扶助組織の起源をさかのぼれば、江戸時代の「五人組」「十人組」に行き着く。その慣習が「隣組」へと引き継がれ、戦後は「町内会」「自治会」という形で残った。

「現在の自治会が担っている防犯活動にもいい面と悪い面、両方あります。自治会が防犯活動することによって地域の治安が保たれる。ただ、地域の安全を守る活動を自治会に頼りすぎると、地域から浮いている人が排除されるという懸念も出てくる。コロナ対応時に浮き彫りになったように、どこまで曖昧さを認め、どこからルールで線を引くのか。難しい問題だとは思います」

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